片付け中に保留になっている「譲る」を前に進める

奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。

片付けるご本人が「手放す」ことにしてくれたものの、捨てずに「譲る」としたものがかなりある…本当にこれを全部譲るのは厳しいのでは?そんなシーンを経験した方もいらっしゃるかと思います。本日は、この「譲る」の進め方について、お話したいと思います。

目次

「売る」と並んで保留になりがちな「譲る」

以前、以下の記事で、売ることにこだわって片付けが進まない際の進め方について、お話しました。

この「売る」ものと同様に、手放すつもりでもすぐに外に出せず、部屋を圧迫したままになりやすいのが、「譲る」ものです。(なお、ここでの「譲る」ものは、基本的に売るのが困難なもの、という前提でお話します。)

多くの場合、「譲る」は、「売る」に比べると、進めにくいでしょう。「売る」は自分の都合に合わせて売却手続ができますが、「譲る」は、相手方の都合や偶然によってやっと機会が持てることも少なくないからです。

そのため、不要なものを「譲る」ことにしたけれども、その後進まず、かと言って捨てることもなく、実質的に保留状態に…ということは起こりがちです。

「譲る」の保留状態から脱するために

片付けを進めるには、やはり不要品は早く外に出したいものです。

もちろん、ご本人の希望通り「譲る作業を進める」でもいいですし、譲るのが難しいなら、「諦めて捨てる」でもいい。「譲るから」で止まっている現状から進むためのポイントを、いくつかご紹介します。

「譲る」相手が思い浮かぶかを聞いてみる

まずは、具体的な譲り相手が思い浮かぶか、ご本人に聞いてみてください。どなたかの名前が出てきたら、譲るのは実現可能な範囲です。また、名前が出てこなくても、例えば「〇〇サークルのいついつの集まりに持って行って、その場で欲しいと言う人がいたら」のように、場所と時が具体的であるなら、同じく現実的な範囲です。

具体的な譲り相手が思い浮かばず、かといってリサイクルに回したり、自分で使うこともできない場合は、「捨てる」方向で考えます。しかし、「そのまま捨てる」には抵抗があることも多いでしょう。

その場合は、いくらか費用を負担することになっても、誰かに使ってもらうことにこだわるかを、ご本人に尋ねてみます。古着・文房具等、寄付という手段を選べるものもありますが、その際も送料等が発生しますし、ダンボール一箱分を寄付するのに数千円かかるということもあります。こうした実際的なことも、ご本人に伝えてみてください。

なお、その場で「寄付か捨てるか」まで決めてもらわなくても構いません。以前に記事「手放す準備になる会話」でも触れましたが、まずは、片付けに関する情報をなるべく中立的に伝え、ご本人に受け取ってもらうところからです。

「譲れる」ものかを再確認する

厳しい現実ではありますが、無料でももらって嬉しくないものは多くあります。特殊な場合を除いて、使った感のあるものは、通常喜ばれないでしょう。また、粗品や低価格品なども、使い勝手のよいものや消耗品なら問題なく受け取ってくれることもあるとは思いますが、それ以外だと「いらない安物を押し付けられた」と感じる方もいます。状態の悪いものや安物を譲ろうとすると、人間関係を悪くしかねません。

譲られる側に負担になりそうなものでも、ご本人が「譲る」と言う場合は、このように、「譲っても喜ばれず、かえって苦しい結果になる」可能性を伝えてみるのも一つです。

そしてその際は、「そんなものは誰も欲しがらない」のような、短く断定的な言い方は避けた方が、受け入れてもらいやすいです。

「傷がついているけど、渡して大丈夫?失礼だと思われるかもしれないし、無理に渡して何か思われそうなら、自分で使うか、捨てるのもありだよ」
「あまり造りがしっかりしてなさそうだけど…安物をあげて心象が悪くなるとかは、心配しなくてよさそう?」

…このように、喜ばれないのを断定する言い方は避けつつも、歓迎されないであろう理由を伝え、人間関係への影響を心配すると、ご本人の考え直しにつながりやすいように思います。

現実に進められる量かを考える

まとめてではなく、個別でしか譲れないものが非常に多い等、手間や外に出せるまでの時間から、譲るのが非現実的なことはあるでしょう。

以前、「売る」ことにこだわって片付けが進まないときの進め方について書いた記事で、ご本人の希望する売却方法が非現実的でないときのお話をしましたが、譲るのが難しい場合も、同じように「全部で〇〇個もある」とか、「週に△個のペースで渡せても1年以上かかる」等、数字をうまく使いながら、ご本人に説明します。そして、譲り終えるまでの手間や時間を具体的にイメージしてもらうようにします。

手伝える部分は手伝う

こちらも「売る」にこだわって進まないときと共通ですが、ご本人が面倒と感じそうなことは、代わって進めてあげたり、手伝いに行ったその場で一緒にするのをおすすめします。

「譲る」の場合は、例えば

  • 寄付先の候補をピックアップし、手続きやかかる費用について調べる。決まったら、その場で一緒に申し込みもしてしまう
  • 溜めてある紙袋からきれいめで大きさも程よいものを取ってきて、「職場の〇〇さんに渡す」ものを入れ、「あとは持っていくだけ」の状態にしてしまう
  • 郵送で譲る場合は、梱包をしてしまう

等ができます。先延ばしにされがちな作業を進めていけますし、一緒に進めるご本人が、途中でやっぱり大変だと感じた場合も、「捨てる」に方向転換するきっかけになります。

「譲る」は難しい…その現実に直面したときに

「譲る」は難しいことです。手間がかかるというのもありますが、「これは〇〇さんに」とうまくコーディネートしたり、相手方の負担にならないように配慮するのは、それなりにセンスも必要です。私は使わないけど価値のあるものだし、喜ばれると思って渡したら、歓迎されなかったようだ…ということもあります。

「譲る」を進める途中でそういったことが起こり、ご本人が落ち込んでいたら、できる範囲で話を聴いてあげてください。「だから、無理に譲らなくてもいいと言ったのに」といったコメントは無用です。

これまでの記事でも度々触れていますが、こうした現実の受け入れは大変で、時間もかかります。大変難しいことですが、時として、作業を進めたり正しいことを言うのはいったん脇に置き、黙って見守ることも、手伝う側には必要だと感じます。

なお、自分達だけでは難しい場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。

本日は、保留になりがちな「譲る」を前に進めるポイントについてお話しました。当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。

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この記事を書いたのは…

メンタルケア心理専門士、整理収納アドバイザー1級。教育機関、自治体勤務を経て、2021年にアトリエめいを開業。 カウンセリングを重視した片付けサポートに取り組む。整理収納コンペティション2022にて最優秀新人賞を受賞。奈良県大和郡山市在住。

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