奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付ける本人が、なかなかものを捨てられない…けれどもその一方で、片付けが進まないのも気にしていて、しんどそうだ…本日は、こうした際にできることについて、お話したいと思います。
葛藤に満ちた「片付け」
片付けるご本人が「片付けが進まない」と焦りを口にする場合があります。
捨てたくないけれど、片付けたいし、捨てないといけないのも分かっている…
ご本人にとっては、片付けというのは葛藤に満ちた作業です。特に最初は、捨てることへの不安も大きいため、しんどい割になかなか進みません。
それだけでもなかなかつらいのですが、そこに、うまく片付けを進めた人の話をご本人がたまたま聞いたり読んだりして、さらに落ち込むということもあります(ただ、片付けの話が入ってきたということ自体は、ご本人の片付けへの感度が上がっているということですし、いい兆しです)。
気持ちを軽くする方法
ご本人が片付けが進まないと気にしているときに、次のことをすると、気持ちの負担を軽くできる場合があります。
- 「実はみんな大変」ということを話す
- 「そもそも完璧にはできない」という、片付けの実際を教える
以下、順に解説していきます。
「実はみんな大変」ということを話す
ご本人が、片付けがスムーズな(ように見える)人と自分を比べて、
「自分はダメだ…」「頑張っているつもりだけど、まだ努力が足りないのか…」
のようになっている場合は、「他の人も時間がかかって大変」という話を耳に入れてあげると、それだけで心が軽くなる場合があります。
片付け業者のホームページで紹介されているbefore→after写真等、短期間のうちに部屋を片付けた例を見ると、自分だけが要領や思い切りが悪くて、みんなはうまくやれているように感じてしまうかもしれません。
でも、実際はそんなことはありません。
before→after写真の部屋の持ち主は、片付ける決心をするまでに長い時間がかかったでしょうし、ご家族も、説得が大変だったことでしょう。
「実家の片付けに△年かかった」「〇年間どうしようか悩んでいた家具を、ようやく手放せた」等の話は、片付け本や、雑誌の片付け特集でも、探せばいくらでも出てきます。遺品整理を手がける業者の多さも、存命中に片付けを始める難しさを物語っているように思います。
「みんなやっぱり大変みたいよ…こないだ読んだ本でも『3年かかった』話があったし…」
等の話をすると、「実はみんなそんな感じだ」と分かって、ご本人もホッとすることがあります。
「みんな大変」を伝えるときに
言葉にすれば同じ「みんな大変」ですが、そこにどんな気持ちを込めるかには、気を配らないといけません。例えば、
「みんな大変なんだから、あなたも甘えてないでやりなさい」
という気持ちが入ってしまうと、ご本人は責められたように感じ、つらくなってしまいます。
あくまで、
「あなたは、自分が人と比べて怠けているかもしれないとか、能力がないように感じているかもしれないけど、そんなことはないよ。誰にとっても大仕事なんだから…」
という文脈で伝えます。
もし、どうしてもご本人を責めてしまう気持ちが入ってしまい、うまくいかない…ということでしたら、第三者に入ってもらい、ご本人の苦労をうまくねぎらってもらいながら進めることも検討してください。
「そもそも完璧にはできない」という、片付けの実際を教える
ご本人が、なかなか捨てられない一方で、もっと捨てなきゃと焦っている場合があります。
「捨てる」を徹底できない現状にネガティブな気持ちになっているものの、そこから「このままではだめだ」と思い切って捨てるということもまた、難しい…
そんな状況では、そもそも完璧にはしなくていいという片付けの「実際」を教えてあげることで、ご本人の「徹底しなければ、やり切らなければ」というプレッシャーが和らぐことがあります。
ですので、例えば
片付けでは「保留」ボックスを作るのは定番。使っていないけど、手放しがたい…使いそうな気がする…そんなものは存在するもの。その場で全てのものについて白黒つけられなくてもいい。
ものの見直しは1回やって終わるというわけではなく、今後も生活スタイルが変わり、不便が出てきたら、そのタイミングでまた行う。退職した、子どもが独立したなどで、必要な持ちものも変わっていく。これがサイクルとして続いていくので、「今徹底して完成させる」のを目指さなくていい。
といったことはぜひ伝えてあげてください。
また、捨てること以外でも、
収納前のものの分類や収納場所を、どうすれば一番いいのか考えすぎて進めない…
という場合もあります。こちらも、どのみち生活に変化があれば見直すものですし、不具合が出てくればそのタイミングで直すのが普通だから…と伝え、ハードルを下げます。捨てるのを徹底できない場合と同様に、今最終版を完成させることにこだわらなくていい、まずは試しにやってみようと促すのが大切です。
片付けが進まなくて…というケースでは、ご本人は「やるからには完璧にしなければ」と思っている…でもそれが難しくて、全く手つかずのままになっている…という場合があります。
こうした状況にある方にとっては大変難しいことですが、
ベストじゃなくても、ベターでいいから…
を、まずは重要度が低いと感じてもらえるところで、少しでも取り入れていくことが鍵になります。「ベストにこだわって全く進めないぐらいなら、ベターでいいから一歩進む」をあちこちで重ねていくと、片付けは進みます。
「片付けが進まない」の後ろに、単純な焦り以外の気持ちがあることも
なお、「片付けが進まない」とご本人が度々口にするものの、単純な焦り以外の気持ちが込められている場合があります。例えば、こんな気持ちが込められていたりします。
- 手伝う人に「申し訳ない」という気持ち
- すごくしんどいのをわかってほしい、という気持ち
「申し訳ない」という気持ちは、「いやいや、私がやりたいと言い出した片付けに付き合ってもらってるだけだから…」「今どき、手伝ってもらうのは普通だし…」と言っても、気休めにもならないこともあります。
「手伝ってもらうのが普通」と言っても、ご本人からすれば「それはあくまで他人の話」だったりしますし、負担をすぐに軽くするのは難しいことが多いと感じます。
ですが、「しんどいのをわかってほしい」は、話を聴いてあげることで、ある程度解消できることがあります。
思い入れのあるものや、人とのつながりを感じさせるものが多くて、残すものを選ぶにも、本当に大変で、しんどい…それをわかってほしい…
ご本人は、そんな状況のこともあります。作業はいったん横に置き、ご本人の話すつらさに耳を傾け、苦労をねぎらうと、ご本人は気持ちが楽になります。
言葉の背後にある気持ちを汲み取るのは難しいです。特に自分が同居家族の場合は、ご本人の気持ちに繊細になる以前に、「こうしてほしい」「こうなってほしい」という気持ちが先立ってしまいがちです。もし、それでご本人と協力して進めるのが難しいという場合は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。
本日は、片付けるご本人が「片付けが進まない」と気にしている際にできることについて、お話しました。
当ブログでは、引き続き、実家の親や夫といった、ご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。