奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
皆さんの中には、親や夫といったご家族の片付けを手伝ったものの、ものが減らず、「進まなかった…」と落胆している方がいらっしゃるかもしれません。今日は、片付けでものが捨てられなかったときに、ぜひしていただきたいことについて、お話したいと思います。
スムーズに手放してもらうのは難しい
片付けをし、その場所の見た目がすっきりするところまで、ものを減らすことができた。もしそうであれば、片付けるご本人も手伝う側も、「片付けが進んだ」と感じられることでしょう。しかし、実際はスムーズにいくとは限りません。
ボールペンが100本近く出てきた。これを全部使うことは、まずない。でも、本人は捨てるのを拒否している…
こんなことも起こり得ます。
片付けを手伝う側としては、早くご本人に気持ちの良い環境で過ごして欲しいですし、特に部屋の安全が気になるほどものが多いと、一刻も早く減らしたいところです。けれども、そんな思いとは裏腹に、その場で手放してもらおうとすると、かえって進めなかったりします。ご本人、手伝う側の両方がしんどい思いをすることもあるでしょう。
捨てられないし進んでいない…そう感じてしまったときにぜひしていただきたいのが、「目標を『今ここで手放す』より低くする」ことと、「心の中の作業を評価する」ことです。順に解説していきます。
目標を「今ここで手放す」より低くする
ご本人にその場で手放すよう説得しても、お互い主張が平行線になることは多いかと思います。また、手放すのを促すと、ご本人が片付けそのものをやめると言いかねない…そんな場合もあるでしょう。
こうした状況では、目標を「今ここで手放す」よりも低くしていただきたいと思います。ご本人が現実に受け入れられる片付けをする…そのために、こうした歩み寄りが必要になることは多いです。
なお、「今ここで手放す」に代わる当面の目標としておすすめなのが、次の
- 片付けをネガティブな気持ちで終えない
- 在庫量を意識する
です。順に解説していきます。
片付けをネガティブな気持ちで終えない
ご本人が片付けを先延ばしにしてきた背景に、
片付けを始めると手が付けられないことになりそう…
ものを捨てると、今までの自分の成果や思い出まで失われてしまうと感じる…
こんな思いがある場合があります(もちろん実際には、部屋に入っている以上のものが出てくるとか、成果や思い出がなかったことになるというのは起こらないのですが…)。
このように、片付けを始めると何か大変なことが起こりそうだ、と思っている方にとっては、
片付けを始めても、恐れていたこと、悪いことは起こらなかった
という経験をするのは(もっと欲張れば、そうした経験を重ねていくのは)、今後の大きな支えになります。
また、片付けるご本人にとって、ネガティブな体験はかなり強く印象に残り、今後に差し支えやすいという場合もあります。だからこそ、たとえものが減らせなかったとしても、言い争いや、無理に捨てさせられたという状況を避けて作業を終えるのは、とても意味のあることです。
できる範囲で、ねぎらいやお礼の言葉も
「お疲れ様」「片付けに付き合ってくれてありがとう」とねぎらうのも効果的です。こちらが手伝ってあげているのに、お礼?と思うかもしれませんが、長年嫌がっていたことを頑張ってやってくれた、という面を見てあげることがポイントです。もちろん、無理のない範囲で構いません。なお、片付けの続きはこの日にという話もできたなら、とてもいい流れができています。
在庫量を意識する
捨てられなかったとしても、今あるものの数を把握し、
「当分新しいものは手に入れないことにした」
までできれば、片付けは進みます。
片付けでは、大きな方向性として、「必要なものを、必要な量だけもっている」状態を目指していきます。その中で、今までセールだと即買いしたり、粗品を何でももらっていたのが、たとえボールペンだけでも「家に充分あるし…」と思いながら行動するようになれば、大きな一歩です。
たった1アイテムだけしても、たいして進まないのでは…と思われるかもしれませんが、まずはこの1つを定着させるのが大切です。在庫量の意識は、大きな変化です。そして、一つがしっかりはまれば、他のものでの受け入れも、大部分があっさり進みます。
捨てるのがスムーズにいかないと、手伝う側も焦りがちです。でも、在庫量が意識され、今よりものが増えるのを抑えられれば、心に少し余裕ができます。
心の中の作業を評価する
「目標を『今ここで手放す』より低くする」に加えて、もう1つしていただきたいのが、「心の中の作業を評価する」ということです。
そもそも…の話になりますが、何年も片付けが先延ばしになっていた場合、「ものを出して見る」だけでも大仕事です。山積みになっている、することが多そうというだけでも、ご本人のやる気がそがれてしまうことはあります。また、片付けなくてはと思いつつも、手を付け始めるとどんな大変なことになるかわからない…そんな不安から、何年も始められなかったということもあります。
そんな中で、たとえほんの一部でも、ものを出して見ることができたというのは、大きな一歩です。ご本人にとっては、一大決心だったかもしれません。まずは、ここまで既に、ご本人は心の中で大仕事をしたのだと思ってください。手伝う側も、そこまで背中を押してあげられたのです。これはものすごいことです。
そして、その後も、思うように捨てられなくても、心の中で進む部分はあります。
- 片付けの話を自分からしてくれた
- 余分な粗品をもらうのを控えてくれた
- セールだったけど、「もう充分あるし」と買わずに帰れた
…
捨てた量以外での、こうした心の変化も評価してあげるのは、長期戦の片付けではとても大切なことです。捨てられなかったからといって「全く進んでいない」という評価を下すのは、ご本人も手伝う側も辛くなります。
心の中での作業がほとんど、と言われている片付けです。ぜひ、ものの量の変化ではまだ表れていない、ご本人の心の変化も見てあげてください。それが、手伝う私達自身のモチベーションにもつながります。
本日は、思うように捨てられなかったときに、ぜひしていただきたいことについてお話しました。長文になりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。当ブログでは、引き続き片付け応援のための記事をアップしていきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。