奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
包装や紙袋、カバー、封筒、ダンボール…もの本体ではないものの、片付けるご本人もなかなか捨てたがらず、地味にスペースをとっているのがこうした「入れもの」です。本日は、片付けでのこれら入れものとの付き合い方、特に手放してもらう際のポイントについてお話したいと思います。
片付け現場では多い「入れもの」
片付けの現場では、「入れもの」に入ったままのものによく出会います。
袋に入っていて一見タイトルが分からない本、送付時のダンボールに入ったままで内容が分からない贈答品、大型封筒に入った書類…
ものを何百何千と仕分けていく中では、これらを入れものから出すのも、トータルで結構な手間になります。以前に記事「効率が上がる、疲れが減る…今すぐできる、片付け作業アシスト」でも触れましたが、もの本体をこれらから出すのが、手伝う側のメイン作業の一つになるぐらいです。
そして、作業で入れものから出したものは、次のように扱う場合があります。
- すぐには捨てる判断ができず、後で見返す
- 同じ案件の書類がバラバラになっていた場合等、後で出てきた他のものと照合したり、まとめる
長期戦の片付けでは、今後のこうした処理は楽にしたいところです。また、片付け対象の場所に、思い出品など、手放し難く再入手もできないものが多い場合は、何とか他でものを減らし、空間を捻出したいところです。
これらのためにぜひ実践したいのが、「なくせる入れものはなくす」ことです。
「入れもの」をなくすメリット
片付けにはおなじみですが、入れものをなくすメリットを簡単に解説します。既にご存じの方も多いと思いますので、もういいという場合は、次の章まで読み飛ばしてください。
片付けや家事の時短化で定番の技に、「パッケージから出しても大丈夫なものは、出して中身だけ収納する」というのがあります。
例えば、我が家では、掃除用のメラミンスポンジを買ったら、外袋は捨ててしまい、中身だけ収納カゴに入れています。使うときにいちいちのり付きの包装を開けて…などすることなく、スッと手に取れて便利です。スペースも、袋入りのままなら納まるところは限られますが、中身だけなら融通が利きますし、写真(洗面所下のストック品スペースです)のように、高さのない空間でも収納できます。固形石鹸も同様に、外箱は処分して内袋だけの状態にしています。
もちろん、中身だけにすると便利なのはこれ以外にもあります。
例えば、私は一時保管する書類が届いたら、封筒は処分し、中身だけ広げてA4クリアファイルに入れています。相手方の連絡先が封筒にしか記載がない場合は封筒も保管しますが、封筒に入れ直すことはしません。また、大型封筒なら連絡先部分だけ切り取り、残りの部分は処分しています。先ほどの包装がない場合と同様、すぐ取り出せますし、中身が見えるので何の書類かすぐ分かり、便利です。封筒をなくし、書類を広げた分、全体の厚みも減って、大きさもA4で揃うので、個別フォルダやファイルボックス内での管理もしやすくなります。
まとめると、入れものをなくすと次のようなメリットがあります。
- 体積が減り、少ないスペースでも入るようになる
- 中身を取り出しやすくなる
- 中身がすぐわかるようになる
- 形状や入れ方を収納・保管場所に合わせやすくなり、管理が楽になる
これらのメリットは、片付け後の日常生活だけでなく、片付けを進めている最中にも享受できます。ものがあふれ、作業スペースや足の踏み場の確保もこれからという状況では、空き空間が増えるのはありがたいことです。また、最初に触れたように、長期の片付けでは、後でもう一度見返したり、まとめたりの機会も多くなります。片付け期間中の手間をなくすためにも、なくてもよい入れものは手放してしまうのがよいでしょう。
実際の進め方
とはいえ、片付けるご本人にこれらの入れものを手放すよう勧めても、なかなか聞き入れてもらえないことは多いでしょう。
例えば、次のような理由から、ご本人が入れものを手放すのを渋る場合があります。
- もの本体を汚れから保護するため
- セットだったのがわからなくなるから
- これくらい大したスペースはとらない
こうした状況の中、進めていくためのポイントを4つご紹介します。
入れものをなくすメリットを伝える
まずは先ほど紹介した、入れものをなくすメリットについて、ご本人に説明してあげてください。一つ一つのときは大したことないように見えるけど、100個200個になると、見返したいときに出して入れるのも大変だよ、と伝えます。ただし、その場で説得して手放してもらうまでは目指さなくて大丈夫です。馴染みのない考え方を受け入れてもらうには時間がかかります。以前に以下の記事でも触れましたが、まずは一つの情報として受け取ってもらいます。
なお、ダンボールや紙袋が多いと、ゴキブリやダニを招きやすくなります。こうした紙製の入れものが目立つ場合は、不安を煽らない程度に、衛生面での心配も伝えてください。健康に関わるとなれば、ご本人のフットワークが軽くなる場合もあります。
なくしたくない場合は、他の入れものに変える
汚れからの保護や、ひとまとまりにしておきたい理由から入れものをなくしたくない場合は、収納が完成する終盤までの間、他の入れものに変えることを考えます。例えば、中身からすれば大きすぎる紙袋に入っているなら、よりコンパクトサイズのものに変えます。ダンボールも同様です。
また、何が入っているか一目で分かるよう、紙袋の外側にマーカーで内容物を書くか、ラベル代わりのメモを貼ります。中身がわからない色柄付きのクリアファイルに入っているものは、ご本人のこだわりがなければ無色透明なものに入れ替えます。また、封筒にそのまま入れておきたいとおっしゃる場合は、封筒に鉛筆で内容物を書きます。
入れものを完全になくす場合より効果は弱まったとしても、「中身を分かりやすくする」「体積を減らす」はできます。入れものを完全に手放してもらうか、ご本人がおっしゃる通りに保管かの二択ではなく、その間を行くかたちになります。ベストではなくベターではありますが、このように、ご本人の抵抗が大きい場合は、ベストにこだわらず、ベターをどれだけ重ねていけるかが鍵だったりします。
入れものをなくすメリットを実感してもらう
入れものをなくすよさは、実際に入れものをなくしてみないと実感しにくいですし、入れものがどれだけ体積をとっているかも、片付けを進めないことにはイメージが湧きにくいものです。
そこで、入れものをなくすメリットを伝えた後は、まずはご本人のこだわりが少ないところで、入れものをなくすことにトライします。(可能なら、文房具など、使用機会もそこそこある日用品が狙い目です。)そして、入れものを手放してくれたから、こんなにコンパクトになった、ここに収まるようになったとしっかり伝えます。手放すことにした入れものの総量を見せて、これだけのスペースができたとアピールしてもいいでしょう。入れものをなくすのが厳しいなら、先ほど紹介した、入れものを変えることで捻出できたスペースについて話すのでも構いません。出し入れのしやすさや、中身の分かりやすさといったメリットは、ご本人が徐々に実感していってくれます。
ご本人にとっては、「それぐらいなら別に構わない」ぐらいのところを探して、そこでこちらに合わせてもらい、効果を感じてもらう。そして、ご本人の納得が追い付いてきたら、範囲を広げていく…そんなイメージです。なお、こちらに合わせてもらった際は、できればで結構ですので、「これで片付けが進めやすくなった」とお礼も言うようにしてください。
ここで減らせれば、残せるものが増えると訴える
大きな片付けを経験したことのある方は、ものを手放す痛みが多少あったとしても、空間ができるメリットは大きいと実感されていることでしょう。
例えば、
- 出し入れ時に前にあるものをどけなくていい。また、ぎゅうぎゅうに詰まった中から引っ張り出したり、詰め直したりしなくていい
- 他のものと絡まったり当たったりを気にしなくていい
- 埋もれにくいので探しやすい
- 見た目の圧迫感もなくなった
等です。ものが多かった頃は意識していなくても、いざ片付くと、今までなんてストレスが多かったんだろうと気づきます。そして、空き空間の価値を実感します。
それでも、片付けがまだこれからで、空間ができるメリットを実感したことがないと、空間がものを手放してまで得る価値のあるものには見えなかったりします。「空いているのに、何も入れないのはもったいない」とぎっしり詰め込もうとする方もいます。
こうした状況では、何もない空間こそ価値があるのだと力説しても、分かってもらうのは難しいです。その代わりに、「ここで手放したら、その分これだけのスペースができるから、残せるものが増える」と訴えると、いくぶん効果がある印象です。
空き空間をつくるためというのはピンと来なくても、とっておきたいものを入れる空間を確保するためとなれば、「仕方がないか…」と重い腰を上げてくれることもあります。通常、入れものはそこに入っているもの本体ほどの価値はありません。全てのものをとってはおけない以上、優先順位が低くなるのは自然ですし、ご本人もそれは分かってくれることが多いでしょう。ぜひ、試してみてください。
本日は、片付けの場で出会う入れものとの付き合い方について、お話しました。なお、自分達だけでは難しい場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。
当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。