奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付けに消極的なご家族に声をかけ、今あるものの要・不要の見直しを始めてもらえた。けれども、こちらから見ると、もう手放してもいいのではと思うものでも、本人はまだとっておくと言う。旅先で食事をしたときのレシート、最近使っていない眼鏡や洋服、長いこと使いかけでそのままの消耗品…本人は、とっておくの一点張りだけれど、こういうものも手放していかないと、片付かない…
このように、ご本人の意向を尊重したくても、現実的には手を付けざるを得ない、何とか手放す説得をしたい状況は多いことでしょう。今日は、手放すことを受け入れる準備になる「会話」について、お話したいと思います。
手放す理由がもっともだとしても…
片付けでは、皆さんどんな理由からものを手放されるでしょうか?
- 壊れていて使えない
- 使えないことはないけれど、傷んでいていかにもみずぼらしい
- 同じようなものが他にもたくさんある
- (梱包材、パッケージなど)ものの本体ではない
- (服飾品、眼鏡など)今の自分の体に合わない
- もう3年は使っていないし、今後使う予定もない…
手放す理由は様々ですが、どれも説得力があるように思われます。
けれども、片付けの問題を抱えるご本人に、こうした理由を伝えて手放すよう勧めても、聞いてもらえないことは多くあります。手放す方が生活の実際に沿っていると何度も説明したり、「手放さないと片付けは進まない」と力説しても、逆効果だったりします。
ご本人が迷っていたり、こちらの提案にどこかしら受け入れがたさを感じているときは、「こうするべきだ」と訴えても、なかなか受け入れてもらえないものです。たとえこちらの提案がもっともだとしても…です。
片付けでの考え方は伝えつつ、決定権は本人に
一方で、説得に応じてくれることにそう期待せず、こちらが持つ情報を伝えるのをメインにすると、不思議とご本人は望む方に動いてくれたりします。
片付けに限らず、日常の他の場面でも、相手が迷っていたり、引っかかりがある際は、押さないほうがかえって好結果になったりします。中立的にとでも言いましょうか、無理に説得しようとしないのがコツなのかもしれません。
このような「手放すのを前進させるが、無理に説得しない」の実践ですが、
今は手放せないものを引き合いに出しながら、「ものは、こういう理由で手放すこともある」とさりげなく教えていく
のがおすすめです。例えば、
「〇〇旅行でご飯食べた時のレシートだね。あの時は楽しかったね。…この時はみんなで写真も撮って、その写真もちゃんととってあるから、レシートの方はとっておかなくてもいいかなと思うんだけど…どう?」
「この眼鏡、だいぶ使ってないみたいだけど、度数は合ってる?…ああ、今は合わないんだね。眼鏡は、他の人に使ってもらうのも難しいし、視力がこれから昔と全く同じになることもまずないだろうし、手放していいと思うんだけど…どうかな?」
という風に、
- 片付けの「考え方」…手放すかどうかの判断基準の例を具体的に伝え、
- 手放す提案をしつつも、
- 最後は本人の決定権を確実に尊重した言い方をする
のがおすすめです。
「中立的」の注意点
上述の「中立的」についてですが、片付けでは、矛盾するようですが、「中立的」でも最小限の方向づけは必要と感じています。先ほどの「無理に説得しない」会話の例でも、手放す提案は盛り込まれています。
中立的にというと、片付けること自体、こちらからは話題に出さず、ご本人が自然とその気になるのを待てばいいのかと思われるかもしれません。でも、そこまで下がるのは基本的におすすめしません。
先延ばしにされてきた片付けですし、大変なだけに、ご本人はともすれば後ろ向きになりがちです。ものを出して見るだけでも、ご本人に積極的に働きかけて、進めていってください。
時間がかかる準備期間
このようにご本人に話をできても、その場ですぐに手放せないことは多いかと思います。
歯がゆいかとは思いますが、今はまだ片付けの「準備」の時期です。ご本人にとっては馴染みのない、片付けでの考え方を、まずは知ってもらい、下地を作っていくのです。
何か月かかかる(ものによっては、年単位になったり、やっぱり手放すのは馴染まない場合もあるでしょう)からこそ、今から準備するに越したことはありません。少し先になっても、考え方の一部分でも受け入れてもらえれば、その時に手放せるものは格段に増えます。
考え方や行動を変えるのは、とても大変なことです。そして、片付けが苦手な方の中には、その負担をことさらに大きく感じる方もいます。時間はかかるものと割り切って、大らかな気持ちで接する方がうまくいきます。
情報が入ってくるように
ここで前半の内容に戻りますが、こうするべきと求める態度で接すると、話の中身を聞いてもらう以前に拒絶されがちです。でも、取り入れるかの判断を本人に委ねる姿勢で臨むと、片付けの話も、小耳に挟んだ話やニュースからの情報と同じ具合で、受け取ってもらいやすくなります。
そして、ご本人が自分で片付けを勉強してきてくれることもあります。
- たまたまテレビで片付け番組を見た
- 雑誌で片付け特集があった
- 新聞広告で片付け本の見出しを見た
- 自分と同じく片付けを始めた友人から話を聞いた…自分も、もうこれこれは捨ててもいいのかもしれない…
こんな話がご本人の口から出たら、見通しは明るいといえるでしょう。片付けを後押しする偶然の出来事に、ご本人のアンテナが反応しているのは、とても心強いことです。
本日は、ものを手放すための準備となる会話について、お話しました。なお、どうしても言い合いになってしまう、自分達だけでは難しいと感じる場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めていますアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。
当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。