「片付けなくていい」と言われても、片付ける説得をした方がいいとき

奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。

実家の親や夫といった家族に片付けを始めるよう勧めても、「今のままで、片付けなくてもいい」と、返される場合があります。また、片付けを始められた場合でも、ある程度進むと、途中でも「もうここまでで充分」と言われる場合もあります。本人の意思を尊重して引き下がる方がいいのか、片付けるよう説得していくべきか…本日はこちらについてお話したいと思います。

目次

片付けるかどうかをめぐり、けんかになることも

片付けの必要性については、片付けが問題になっているご本人と、周りのご家族との間で、認識に違いがあることがあります。

怪我の心配や大きな不便もないけれども、「見た目がよくないから、ここに置いてあるこれを片付けたら?」と言われている程度の場合もあれば、床にものが山積みで、平常時や災害時の安全を家族が心配していても、ご本人は「大丈夫」と片付けたがらないこともあります。

ご本人は片付けなくていいと思う中、ご家族が片付けるよう求めると、けんかになることも珍しくありません。それぐらいなら、片付けはやめておきたいという方もいるでしょう。ただ、ご本人が気が進まなくても、片付けた方がいい場合というのは多いです。次の章で、詳しくお話していきます。

「片付けなくていい」と言われても、片付けを進めたいとき

 「片付けなくてもいい」と言われるパターンには、

  • 片付けを始める前
  • ある程度片付けが進んでから

があります。それぞれについて、片付けを進めた方がいい状況について、解説していきます。

片付けを始める前の「片付けなくてもいい」

生活に支障が出ているなら、片付けが必要

そもそも…になりますが、まずは、見た目が片付いているかよりも

片付かないことで生活に問題が出ているか

を見ます。見た目が多少ごちゃごちゃしていても、

  • 散らかっているのは、ご本人だけが使う部屋にとどまっていて、
  • ご本人も周りの家族も現在不便がなく、
  • 将来困る心配もない

なら、片付ける必要性は乏しいといえます。

逆に、ご本人がこれでいいと言っていても、

  • もので通路がふさがれ安全が心配
  • 自分以外の家族の部屋にまで、ご本人のものが及ぶ
  • お客様を呼びたくても呼べない

等であれば、片付ける必要があります。探し物が多い等、ご本人の不便も、「これぐらい大丈夫」と言われることが多いのですが、取り組みたいところです。

説得の方法

ただ大変なのが、

ご本人の安全や不便を心配してこちらが躍起になるほど、説得が難しくなる

場合があることです。

ご本人にとっては、今の部屋の状態が普通になっています。そのため、いくら安全面や不便の指摘が正しかったとしても、強く訴えると、感覚が非常識だと言われたようで受け入れ難いですし、傷つくこともあります。

ご本人がこのあたりにデリケートで、「今の状態だと怪我が心配」等を話題に出したり、そこからの説得をするのが難しそうなら、別のアプローチも考えます。

例えば、その場所に関して

「もっとこうだったらいいのに」とご本人が思っているところを探して、そこにフォーカスして進める

のも一つです。ご本人が、

「写真があちこちに散らばっていて、見たいのをすぐ見られるように整理したい」

「趣味で集めたけど埋もれているオブジェを、綺麗に飾りたい」

などの要望を持っていることがあります。それを叶えるのを目標に、片付けを進めることもできます。

要望の実現に伴って、安全や利便性も最終的に確保するにしても、最初に今の危険性や不便を認めさせることには、そこまでこだわらなくてもいいと私は思います。

気持ちの上で抵抗が大きい場合は、論理的な説明で納得してもらおうとしても困難ですし、明るい気持ちで取り組んでもらえるなら、それが一番です。

認識の変化

ご本人が、最初は片付けの必要性をあまり認識していなくても(もしくは認識しないようにしていても)、片付けが進むうちに変化することがあります。

周りから片付けるよう言われていた初期は、部屋の状況改善に消極的でも、ものを出して見、仕分け作業を重ね、何か月かかけて手放すことにも慣れていくうちに、「やっぱり何とかしないとな…」と自分でも言い出す、というようなこともあります。最初の段階で、こちらと認識を同じにしなくてもいいのです。

片付けが進んでからの「これ以上片付けなくてもいい」

床置き・仕分けがまだ残っているなら、完了まで粘って

特に、何年も床が見えないなど、片付け前に大変な状況だった場合だと、片付けが完了していなくても、ある程度進んだ段階で「ここまでで充分」とご本人が言うことがあります。

もちろん、あとはこれをごみ捨て場に持っていけば終了という程度なら、ご本人にお任せしても心配は少ないでしょう。ですが、通路が確保され、床面積も広がっているけれども、床置きの荷物や、仕分けが大変そうな書類がまだ残っている…そんな状況では、「ここまででいい」「後は自分で何とかする」と言われても、完了まで手伝わせてくれるよう、説得するのをおすすめします。

床置きをなくすまで頑張れば、今後ものが増えにくくなる効果も

これはもちろん、片付けの残りが先延ばしになるのを防ぐ目的もあります。書類など難易度の高いものや、ご本人が仕分けを面倒と感じそうなものは、極力残すのは避けたいところです。ですが、これに加えて重要なことがあります。

収納家具に無理なく収まる量まで、一度徹底してものを減らすと、片付け後も

「今以上にものを増やさない」

という意識を持ちやすくなります。

例えば、いったん床置きが普通になってしまうと、当然ながら際限なくものが増えていきます。棚に本を収めている場合でも、1列で入れている分にはいいのですが、奥と手前で2列置きとか、背表紙を並べて置いた上の空間にまで置くのが標準となってしまうと、中身はすぐに増え、出し入れや所在の把握もできなくなってしまい、片付け前の状態に戻りやすくなります。

床置きも本等の多重置きも、「標準にしない」ところまで頑張れば、今後ものが増えてそこからはみ出した際も、ブレーキがかかりやすくなります。

通路ができて、部屋の風通しもよくなった時点でご本人は満足してしまい、「まだ片付けるの…?」という顔をされることもあるかもしれません。でも、ここで踏ん張る価値は大きいです。最初の頃と違い、ご本人は片付けのよさもわかってきてくれています。

「せっかくここまでやってきたし、もうあと少しだから、頑張ろう」

と励ましてみてください。

本日は、 「片付けなくていい」と言われても、片付けた方がいい場合について、お話しました。

なお、自分達だけでは進めるのが難しい場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。

当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。

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この記事を書いたのは…

メンタルケア心理専門士、整理収納アドバイザー1級。教育機関、自治体勤務を経て、2021年にアトリエめいを開業。 カウンセリングを重視した片付けサポートに取り組む。整理収納コンペティション2022にて最優秀新人賞を受賞。奈良県大和郡山市在住。

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