奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
実家の親などの家族の片付けを手伝っていると、どうしても精神的に疲れるときが出てきます。本日は、そんなときにしたいことについて、お話したいと思います。
片付けの手伝いはエネルギーが要る
片付けを手伝う…特に、片付けるご本人が、ものを捨てることに抵抗が大きい場合、その片付けを手伝うのは、エネルギーが要ります。
ご本人の身の安全や、生活の不便さを思って片付けようとしても、大切なものを捨てさせられると敵視されたり、拒絶されることもあります。
精神的につらい場面が多いのですが、それ以外にも、例えば実家などに通って片付ける場合だと、通う分の時間や体力も要ります。ご本人の意向を大切にし、ご本人の話に耳を傾けるというのも、気力・体力が充実していないと難しいことです。
片付けは、もちろん片付けるご本人には大仕事ですが、こうした状況から、手伝う側も疲れてしまいがちです。
片付けに疲れたときにしたいこと
片付けの手伝いに疲れたときにしたいことを3つ、紹介します。
なお、疲れるといっても、「体力的に」がメインの場合と、「精神的に」がメインの場合がありますが、今回は、精神的な方に焦点を当てています。
- イライラ、モヤモヤはノートや紙に書いて発散する
- 「限界はある」「努力が同じでも、結果はそれぞれ」と思い、自分を責めるのをやめる
- 状況を完全にコントロールするのは無理、と割り切る
ちなみに、これらは疲れを感じる前から実践していると、疲れの予防にもなります。以下、詳しく解説していきます。
イライラ、モヤモヤはノートや紙に書いて発散する
特に、片付けるご本人が捨てることに抵抗が大きい場合、手伝う側の論理が通用しない場面が多くあります。
「こうするのが合理的だ」と、手放すことを一生懸命訴えても、なかなかわかってもらえないのは、よくあります。また、手放してくれることにはなっても、売れそうにないものを「売るから捨てない」など、現実的でないことを希望して…ということもあります。
ご本人に悪意はないですし、ものを捨てられないのも、ご本人が育った環境(人によっては、戦後のもの不足を受けての捨てることへの抵抗や、「ものの多さ=豊かさ」という考え方が強く浸透しています)や、ご本人の生まれつきの特性の影響が強い場合もあります。
ですので、仕方がないものではあります。
それでも、やはり現実とのすり合わせを促していくのはエネルギーを使いますし、手伝う側もイライラやモヤモヤが出やすくなります。
これらの感情が出てきたら、なるべく溜めずに発散できれば、疲弊しきってしまわずに済みます。そのためにおすすめなのが、ノートに自分の気持ちを書き出していくことです。
人に話しにくい内容であったり、愚痴を話して聴く人の負担になったら…と気にしてしまう場合でも、誰に見せるでもなく、書くだけなら気兼ねなく表現できます。モヤモヤもイライラも、感じていい感情です。
自分のそのままの気持ちを、1ページでも2ページでも書きます。デトックスのつもりで、嫌な感情も書き出していってください。
「こんなことを思う私は、冷たい人間だ」等のジャッジは無用です(そもそも、私達は普通に暮らしていても老廃物や排泄物を体から出すものですし、それと同じで、ネガティブな感情というのも出てきて普通、と私は思います)。書き出してしまった後は、誰かに話を聴いてもらったように、すっきりします。
愚痴を書いたノートは、他の人の目に触れない場所に保管します。もしくは、ノートでなく紙に書いて、その都度シュレッダーにかけて捨てるのもありです。他の人が読まないようにだけ気を付けてください。
「限界はある」「努力が同じでも、結果はそれぞれ」と思い、自分を責めるのをやめる
片付けが思うように進まないと、手伝う側もイライラしがちです。その一方で、自信をなくしたり、私のやり方が悪いのかと、自分を責めてしまうこともあります。実家に何度も片付けに通っているのに、状況が目に見えて改善せず、落ち込むこともあるでしょう。
ですが、うまくいかなくても、それは必ずしも、あなたの心が狭いとか、捨てる必要性を論理的に伝えられていないとか、ご本人に信頼されていないわけではありません。
そもそも、第三者ではない家族が手伝う際は、完全に中立的な立場で関わることはできません。そのため、ご本人のペースを尊重しつつ、モチベーションが上がるように心理的にサポートするのは、やはり限界があります。それは仕方のないことです。心理学を学んだカウンセラーでも、自分の家族のカウンセラーにはなれないのです。
また、先ほども触れましたが、ご本人が育った環境もかなりの影響力を持ちます。そして、捨てることを思うと不安になりやすい、作業中に他のことに気が行きやすい等は、ご本人の生まれつきの特性に強く引っ張られていることもあります。
こうしたご本人の個性を受けて、片付けの難易度は大きく変わってきます。
家族をうまくサポートしている他の人と同じ努力をすれば、同じことが必ずできるわけではありません。うまくいかなくても、必ずしも、手伝う側の努力不足や欠点が原因ではないのです。
なお、こちらは片付けが進んでからの話ですが、
「せっかく収納を改善したのに、ちゃんとしまってくれない…」
ということもあるかと思います。もちろん、使いにくさがあれば散らかりやすくなりますが、逆に「収納が適切なら、誰が使ってもものが乱れない」かというと、そうとは限りません。
収納場所にきちんとラベルが貼ってあっても、蓋を開けたり引き出したりの手間を省いたシンプルな収納だったとしても、ご本人は
目の前に空きスペースがあったら、ついそこに置いてしまいがちで…
ということもあります。充分工夫していても、普段からご本人が完璧に元の場所へ戻すのは、難しい場合があります。
こうした場合は、時折家族の助けを受けながら復旧ができて、その家族もしんどくないなら、充分合格ラインです。「毎回、きれいに片付いている」は無理でも、「何日かに一度の復旧が楽、簡単」なら、うまくいっていると思ってください。もちろん、家計の中でやりくりできるなら、家事代行を利用して整えるのもありです。
第三者でない分、できることは限界があります。それに加えて、ご本人の個性も様々で、同じ努力をしても結果は変わります。なかなか捨ててもらえないからといって、あるいは、本に載っているような、こちらが言わずとも自然と片付けてくれる部屋になっていないからといって、自分を責める必要はありません。片付かず落ち込んだ時は、それを思い出していただければと思います。
状況を完全にコントロールするのは無理、と割り切る
特に、早く何とかしなければと焦り、疲れてしまうという場合は、状況のコントロールをある程度諦めると、気持ちの負担を減らせます。
片付けは、ご本人の心の中での作業が大部分です。ものを出したり運んだりの肉体労働や、感情をあまり交えず事務的に判断していく場面もありますが、それ以外の作業は心の中でのものです。そして、それはご本人以外の方が代わるわけにはいきません。他人が直接的に手伝ったり、影響できる場面は限られています。
もちろん、他人との会話を含めた、何かの出来事をきっかけに、ご本人の心の中の何かが変わり始めることはあります。
例えば、
- 同年代の友人が亡くなり、自分も終活が必要と感じた
- 孫が誕生して、安全に遊べる部屋を作らなくてはと思った
等をきっかけに、長年躊躇していた片付けを始められることがあります。
このように、
ご本人に、ある程度心の準備ができたところに、片付けが必要と感じられる出来事がたまたま起こる
というのは、大きな力があります。まさに、天からも「今こそ、その時」と背中を押してもらえた、最適なタイミングだったといえるでしょう。
この場合に比べると、
心の準備が全くできていない段階で、自然とは思われない力を受けて(=周りに意図的に片付けを促されて)始める
のは、やはり難しくなります。
片付けにはこうした特徴があるので、手伝う側が(ご本人もですが)状況を全てコントロールするのは無理がありますし、しようとすると疲弊してしまいます。
「完全にコントロールするのは無理」
と割り切った方が、手伝う側は気が楽になります。また、その結果、ご本人の片付けへの反発が減り、状況がよくなることもあります。
本日は、片付けに精神的に疲れたときにしたいことについて、お話しました。
当ブログでは、引き続き、実家の親や夫といった、ご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。