奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
棚の中がぎっしりすぎて、ものを出しても戻すのが難しいのに、「ちゃんとしまえるから、ものは減らさなくて大丈夫」と言っている…ダイエットに成功したら着るからと、サイズの小さい服を手放せない…ダイエットは何年もできていないのに…
このように、片付けるご本人が、等身大の自分をなかなか受け入れられずに、片付けが進まない場合があります。本日はこうした際の進め方を紹介します。
片付けでは、ものや収納を「等身大の自分」に合わせる
片付けでは、ものや収納を自分の実際に合わせたものにしていきます。
使っていないもの、今後使う見込みのなくなったものは、思い出品として残す場合等を除いて、基本的に手放す方向で考えていきます。また、日々、しまうのが面倒だなと感じたり、出しっぱなしになってしまうことが多ければ、収納方法も見直します。
これらを進めていると、
「せっかく持ってるけど、使いこなせない」
「毎回きちんとしまうのができない」
…そんな自分の実際を受け入れ、諦めるという作業がどうしても入ってきます。
「しよう、できると思っていたけど、やっぱり自分にはできそうにない。」
そう認めるのは時としてつらいことです。でも、それらを経て残すと決めたもの、作った収納は、等身大の自分でも無理なく付き合える、頼もしい仲間でもあります。自分に合うものからなる部屋は、しんどい片付けを頑張ってでも、手に入れる価値があります。
等身大の自分を受け入れてもらうためのアプローチ
そうはいっても、片付けるご本人が、なかなか等身大の自分を受け入れられず、片付けが進まない場合があります。その際のアプローチについて、以下紹介していきます。
「等身大の自分を受け入れられない」のが、収納に関する場合から2つ、収納以外の場合から1つの、計3つの例について、各々解説します。
収納に関する場合の例①
収納に関することで、ご本人が等身大の自分を受け入れられない例として、例えば、こんな場合があります。
棚にものが非常に多く、ぎっしりで隙間がない。ここからものを出した後も、詰め込むのが面倒で戻せず、散らかったままになっている。ものを減らして空間をつくり、出し入れを楽にする必要があるが、本人は「ちゃんとするから」と、現状しまうのが難しいことを認めず、ものを減らす方向で考えてくれない。
このケースのポイントは、「こうした状況できちんとしまうのは、誰でも無理」ということです。そこで、
「どんなに真面目な人でも、使う度に他のものをどけて、うまく詰められるよう調整して…としながら、忙しい日常生活を回していくのは不可能。その都度きちんとしまう時間や体力はないし、まず散らかってしまう」
ということを説明します。
「どんなに真面目な人でも」というところが重要です。
「あなたが特別怠け者だったり、能力がなくて、ものを減らす必要が出てきているわけではない」
というメッセージが込められています。(実際、どんな方でも、日常使うものを戻す度に、きちんと詰めるパズルをするのは、まず無理ですね…)
「できてないじゃない」のような、短く否定的なだけの言い方は控えます。「きちんとできるのが普通だけど、あなたはきちんとできないから、ものを減らすべき」というニュアンスで受け取られやすくなります。そうなると、「やっぱり、ものを減らすのは、怠け者や能力がないのを自認することだ」とご本人が感じ、手放す抵抗は強いままです。「どんな人でも難しいし、それを諦めても、あなたが特別怠けているとか、劣っているということにはならない」が確実に伝わるようにしてください。
収納に関する場合の例②
また、同じく収納に関することで、先ほどのケースと似ているものの、少し事情が違う例として、こんな場合があります。
もの本体をパッケージでくるんだまま収納していて、それらを使うたびに外すのが面倒で、使わずじまいになっている。もの本体は手放したくない、使いたいと言っているので、使いやすいようパッケージを捨てるよう勧めているが、「これぐらい大丈夫、ちゃんと使うから」と取り合ってくれない。
先ほどとの違いは、その都度パッケージから出して使える人もそれなりにはいるだろうということです。でも、ご本人にはそうする負担が大きく、現状では難しい状況になっています。
こうした場合は(整理収納アドバイザーならではの面も多少ありますが)、
「パッケージを外して保管するのはおかしなことではない」
「普通はこうするよね、という通りにするとしんどいから、しないのを選ぶ人もたくさんいる」
「自分が楽にできるようアレンジするのは当たり前のことで、恥ずかしいことではない」
と、収納や関連する家事の実例を挙げつつ、教えてあげるのがおすすめです。
パッケージを取り除く以外で引き合いに出す、「普通をしない例」としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
- 扉付きの棚を買ったが、扉の開け閉めが面倒で、中に入れるはずのものが出しっぱなしになる。だから、扉は外してオープン収納にした。
- 洗濯物をたたんでしまうのが面倒で、乾いた後はそのままソファに降ろして置きっぱなしになってしまう。だから、洗濯物はたたまないことにした。干すハンガーと収納ハンガーは兼用にし、洗濯物が乾いたら、ハンガー掛けのままクロゼットにしまっている。
- やかんは洗うのが苦痛で、シンクに置きっぱなしもなってしまう。だから、思い切って手放した。それ以来、お茶は片手鍋で沸かしている。
例は他にも数えきれないほどあると思いますが、できれば、ご本人の現状に近いことに加え、本やメジャーな雑誌に掲載されていて、「市民権を得ている」感があるものを選ぶのがおすすめです。時間はかかったとしても、「はしょったり、苦手を諦めて工夫するのは、世間的にも認められている」と、受け入れてもらいやすくなります。
収納に関すること以外の例
収納そのもの以外のことで、ご本人が「等身大の自分を受け入れられない」例として、冒頭でも触れましたが、こんな場合があります。
ダイエットに何年も成功していないが、「痩せたら着る」服が大量にある。本人は、これらを捨てると、ダイエットを諦めた向上心のない自分になるようで嫌だと言っており、手放せない。
ご本人は、「ダイエットはできない」と自認することで、自分の価値が下がると感じている…こうした状況では、すんなり全捨てしてもらうのは難しいと思ったほうがいいでしょう。
「ダイエットは何年もできないんだから、これからもできない。だから、諦めて服は捨てるべき」は、片付けでは定番の考え方かもしれません。でも、これはご本人が自分自身でそう思い至る分にはいいのですが、他人に言われても、すぐには受け入れ難いものです。加えて、世間にはダイエットに成功する人もそれなりにいるという事実もまた、「自分には無理」を受け入れるのを難しくしています。
そんな中、「これからもできない」と成功の可能性を全否定してしまうと、「傍から見て、実現は無理だと思う」だけでなく、「世の中には向上心がある人もいるけど、あなたには向上心がない」というニュアンスまで加わり得ます。そこから、ご本人を傷つけたり、関係にひびが入ってしまう…そんな事態は避けたいものです。
ですので、私はこうした場面では、ご本人のダイエット成功の可能性は否定しないようにしています。その代わりに、「では、ダイエットに成功したと仮定して、その時に着たい服をこの中から選びましょう」と言っています。
こうすると、問題の焦点が「できないということを自認するかどうか」から離れたところに移ります。サイズは、ダイエットに成功して入るようになったとしても、色柄は似合わなくなっている…形が流行遅れだ…よく見ると擦り切れている…と、サイズ以外のところも見えるようになり、減らしやすくなります。
また、着たいお気に入りを再発見して、ダイエットへの意欲が増すこともあります。トライして実現すれば、もちろん喜ばしいことですし、途中でやっぱり無理とわかっても、その現実に合わせるほうへ、徐々に動いていけます。
なお、時間が経って、ご本人が「やっぱり自分には無理そうだし、手放すことにした」となったときは、ご本人は大仕事をしたのだと、心の中で拍手をしてください。できなかった自分を受け入れるのは、相当大変なことです。挑戦して成功させるのと同等か、それ以上の価値があります。
まとめ
等身大の自分を受け入れられず、進まないときのポイントをまとめると、次のようになります。
- 収納に関しては、苦手を諦めてアレンジするのはごく一般的なことと伝える
- 誰でも実現が無理なことはその旨を伝え、できなくても怠けている・人より劣っていることにはならないと言ってあげる
- 実現できる人もそこそこいるが、本人はまだという場合は、今後の成功の可能性を否定しない
- 「実現したら」と仮定して、残すものを選ぶ
ご状況に応じて、取り入れてみてください。
本日は、等身大の自分をなかなか受け入れられず、片付けが進まない場合の進め方について、お話しました。当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。