奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付け作業を手伝っていると、片付けるご本人が要・不要の仕分け以外のことをし始める場合があります。時間は限られているし、片付け以外はしてほしくないけれど、あまり言ってけんかになっても…とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。本日は、片付け作業中の中断や脱線との付き合い方について、お話したいと思います。
片付け中にはよくある中断、脱線
片付け作業中に、片付けるご本人が、例えば次のようなことをされる場合があります。
- 出てきたものにまつわる思い出を話し始める
- 他の部屋に行ってしまう
- 出てきた本などを、仕分けに必要な範囲を超えて読み始める
どれも作業は止まってしまいますが、見かけ上は中断や脱線でも、お付き合いすることで、直接・間接に片付けへの効果が出る場合もあります。
中断や脱線の場面ごとの対応
付き合うことで、片付けに効果が出る中断や脱線とはどんな場合でしょうか。逆に、早めに本来の作業に引き戻した方がよいのはどんな時でしょうか。代表的な場面ごとに、解説します。
出てきたものにまつわる思い出を話し始める
思い出話を聴くことの、片付けへの効果については、以前に以下の記事でも書かせていただきました。
こちらに記したように、思い出話を聴くと、同じ思い出にまつわるものの数を減らす準備になりますし、ご本人の気持ちを表現してもらうことで、もの自体を残すこだわりを和らげる効果があります。
これらに加えて、思い出話を聴くのは、ものを残す優先順位をつけやすくする効果もあります。
捨てること全般に抵抗が大きいと、あれもこれも「残す」で、なかなかものが減りません。でも、全てを残すわけにはいかないのは、ご本人も作業の中でだんだん分かってきます。その中で、大切な思い出に関係したものなど、なにかしら思い入れが強いものが出てくると、チャンスです。
そのものにまつわるエピソードや想いを話してもらうと、思い入れのないものとの差を認識してもらうきっかけになります。
「これと〇〇(先ほどの思い入れのあるもの)だったら、どっちを残したい?」
「どうしても片方捨てないといけないなら、〇〇を残す」
と、優先順位をつけやすくなります。
また、以下の記事でも触れましたが、思い出話を聴くことは、ご本人、そしてご本人の大切なものの尊重でもあります。
聴くことを重ねていくと、協力関係を築けます。
そのため、やや間接的ではありますが、片付けが進めやすくなります。出てきたものにまつわる思い出話は、作業の手を止めてしっかり聴いてあげるのをおすすめします。
他の部屋に行ってしまう
次のような具合で、片付けるご本人が作業中に他の部屋へ行ってしまう場合があります。
例1:何かを見つけると、関連するものを他にも思い出し、それを他の部屋に探しに行く
(例えば、ある服を見つけると、それと一緒に買ったアクセサリーが別室にあったのを思い出し、取りに行くなど)
例2:他の部屋に移動すべきものが出てくると、出てきた都度、移動しに行く
(例えば、寝室の片付け中に、玄関に置く折り畳み傘が出てくると、すぐ玄関に持っていく等)
確認や移動が必要なものは、いったん集めておいて、後でまとめて確認や移動の時間をとる方が効率がいいです(もちろん、ものが大きくて、作業場所の確保のために早く移す方がいい、等の場合はすぐすることもありますが…)。
ですので、こうした際は「その都度するより、後でまとめてした方が楽だし、今しなくても大丈夫だよ」と伝えてあげてください。
「それだと効率が悪い」等のネガティブな言い方は避け、ポジティブな提案になるよう言うのがポイントです。また、例1のような場合は、そもそも別室にあるものを持ってきても、残すか手放すかの判断には関係してこない場合もあります。
「今しなくても大丈夫」
と伝えてみてください。
ただし、ご本人が、行動を思い立ったらブレーキをかけるのが非常に難しい、という場合もあります。
これは、ご本人の生まれつきの特性に引っ張られている場合があり、必ずしも片付けにやる気がないとか、手伝いを拒否しようとしているわけではありません。そして、こちらが説得や制止をしようとしても厳しいこともあります。
作業時間が若干短くなる程度なら、無理に止めず、付き合おうと割り切るのも大切です。ご本人のしようとしていることを否定しなかった、ペースを尊重した、ということが、これから協力していく上でプラスに働くこともあります。
なお、制止が必要な場合は、「思いとどまらせる」というよりも、「注意を他に向けてもらう」のを意識してみてください。例えば、
「邪魔するようでごめん、こんなものも出てきたんだけど…」
と、
- ご本人が興味を持ってくれそうな新たなものを、これから仕分ける山から出してくる
- 話題をそちらに移し、その流れで作業に戻ってもらう
…という具合です。
出てきた本などを、仕分けに必要な範囲を超えて読み始める
今後使うかの判断のために、出てきた本などの内容を作業中に確認することがあります。ものによっては、関係する思い出やエピソードを聴くこともあるでしょう。
これらは、そのもののご本人にとっての価値を判断し、要・不要の仕分けをするために必要なことです。
しかし、価値判断から離れて、単なる趣味の時間が始まってしまったら、早々に片付け作業に引き戻してあげてください。先ほどの場合と同様、制止が難しいなら、
「注意を他に向けてもらう」
方向で話しかけてみるのがおすすめです。
ちなみに、このように「途中で他のことに気がいってしまう」のも、先ほどの「行動にブレーキをかけにくい」のと同様、その方の生まれつきの特性による影響が大きい場合があります。必ずしも、やる気のなさや拒否の意思からではありません。
片付けを手伝う難しさ
ご本人が片付けに抵抗が大きい場合、その手伝いには特有の難しさがあります。
今回は中断、脱線について見ていきましたが、目の前の仕分け作業を進めることだけ考えていても、逆にご本人の気持ちのままにとしていても、うまくいかなかったりします。
完全に一つの方針だけにのっとって進めると、行き止まりになりやすいです。その都度状況を見ながら、折衷案とも言えるやり方を繰り出していく…そんなことが多いと感じます。そして、これにはエネルギーも必要です。
皆様も、手伝う中で大変だと感じることがあるかと思いますが、それだけのことをしているのだ、と思ってください。スムーズにいかない時ほど、ご自身の努力をねぎらうのも大切です。
本日は、片付け作業中の中断や脱線との付き合い方についてお話しました。当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。