「売る」にこだわって片付けが進まないときに

奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。

片付ける本人が、「売るから置いておく」と言うものが多くある。見てみると、売れなさそうか、売れても大きな金額にはならなさそうだ。手間を考えると捨てた方が現実的だと思う。でも、そう言って捨てるよう勧めても、なかなか聞き入れてもらえない…

そんな経験のある方はいるのではないのでしょうか。本日は、ご本人が「売る」ことにこだわって片付けが進まないときにどうするか、そのお話をしたいと思います。

目次

「不要」と判断してくれても…

片付けで要・不要の仕分けができた後、「不要」なものは行き先を決める必要があります。

需要がありそうなものなら、捨てずに使ってもらえる人に譲ったり、売却してお金に換えるのは、皆さん考えることでしょう。「そのまま捨てる」よりもだんぜん気持ちが楽ですし、地球環境の観点でも、リユースは望ましいことです。もの自身も、使ってくれる人のところに行ければ本望でしょう。

しかし、片付けを手伝うと、そんな「不要品」の行き先をめぐる問題も出てきます。

需要がなさそうなものや、売れても金額は期待できないものなのに、「売るから」と捨ててくれない。そして、その「売る」作業も実際には進まず、ものが減らない…そんな場合があります。

「売る」にこだわってものが減らないときのポイント

そんな時に、事態を進展させていくためのポイントをご紹介します。大きくは、

  1. 本人が感じうる気持ちを理解しておく
  2. 買取価格や売却方法は具体的に伝える
  3. それでも売却を希望なら、実際にできるよう応援する

になります。以下、それぞれ解説します。

本人が感じうる気持ちを理解しておく

片付けるご本人が、

「買ってくれる人がいるはず」「必要としている人がいるはず」

と思って、長年捨てずにとっておいたり、集めていた場合があります。

それらのものが、実際は需要がなかったり、ただ同然の値段しかつかないものだった…そう分かると、ご本人はショックを受けたり、今までの自分の行動を恥ずかしく感じたりすることがあります。

そんな場合は、捨てる等の実際の対処ができるまでは少し時間がかかるのが自然だと思ってください。現実の受け入れはゆっくりです。

また、以下で買取価格等を調べたり、実際の売却作業を進めたりもポイントとして挙げていますが、やはりどこかの過程で、ご本人がショックを受けたり落ち込んだりする可能性はあります。ご本人に現実に沿った行動を促してはいくのですが、同時に、現実に直面する大変さも理解し、ご本人をいたわる気持ちを心の片隅に持ち続けることは大切です。

買取価格や売却方法は具体的に伝える

「売ると手間がかかるし、労力に見合わないから捨てた方がいい」というざっくりした言い方だけでは、ご本人が実際の大変さをイメージしづらいことがあります。

そこで、売却希望のものを数点ピックアップします。(もちろん、需要がないとわかったときのショックが大きそうなものは、最初は避けてください。)買取価格相場の他、手数料・送料を差し引いた純益を調べ、ご本人にその話をします。発送手続きのできる場所や、自宅集荷の料金も調べてあげると、足を運ぶ手間その他の負担もイメージできます。「買取不可」な場合は、買取業者のWebサイト等を見せつつ、そのことを伝えます。

調べる手間はかかりますが、売却の希望と現実とのすり合わせが必要だと感じたら、このように少し踏み込んで、「実際売るとなると…」の話をしてみてください。「面倒な調べもの」はご本人任せにせず、積極的に手伝ってあげると、ものの行き先を決めやすくなります。

なお、以前に以下の記事で、中立的な態度で臨むと意見が受け入れられやすいと書きました。

今回のように、売却はすすめないという話をする際も、「なるべく中立的に」を心がけると、受け入れられやすいです。

できれば、「こんなに大変だから売却はやめるべきだ」から一歩引いて、

「売却はこれぐらい大変で割に合わないし、捨てる方でもいいかなと私は思うんだけど…どうかな?」

のように、ご本人に判断を委ねる言い方をしてみてください。

値段がつかないとわかると、「それなら手元に置いておく」となるものもあります。その一方で、換金性があると思い、いつかお金に換えようと手元に置き続けていたけれど、低価格と判明して、「それぐらいの額にしかならないなら、もう手放してもいいや」と一気に出して、片付けが大幅に進む…という場合もあります。いずれにしても、何らかの進展があることが多いので、実際の買取価格の調査はおすすめします。

売却方法が現実的でないとき

もの自体に需要はあっても、ご本人の希望する売却方法があまり現実的でない場合もあります。買取価格は安くてもまとめて買ってくれる買取業者さんは、手間が少なく、ものもすぐに出せるので、通常は第一選択です。しかし、ご本人は買取金額が高いフリマアプリでの売却を希望している…そんなこともあります。

ご本人にそのアプリの使用経験が全くなかったり、売却希望点数が非常に多かったり、状況全体から非現実的と感じることはあるでしょう。

この際も、「時間がかかるから無理」という漠然とした説明で終わらせず、「週に2個のペースで売れても1年以上かかる」「発送場所のコンビニまで車を使うし、そこに100回以上行くのも大変だと思う」等、大変さを具体的にイメージできるように、数字もうまく使って説明します。

それでも売却を希望なら、実際にできるよう応援する

買取価格や売却の手間がご本人に伝わり、気持ちが落ち着いた後でも、なお売却したいということであれば、実際の売却作業を手伝います。まとめて買い取ってくれる買取業者さんでよいとのことなら、手伝うその場で買取の申し込みもしてもらいます。そして、「あとは渡すだけ」の状態になるよう、ダンボールに詰めて封をするところまで一緒にします。

また、フリマアプリ希望の場合も、手伝いに行ったその場でスマートフォンにインストールしてもらい、操作を始めてもらうなど、売却に向けて実際に歩き出してもらいます。「実際、これで進めるのは難しいだろうな…」とちらっと思っても、同時に、本気で応援する気持ちも持ちながら手伝えれば理想的です。

そんなところまでするの?と思うかもしれませんが、そこまでしないと壁が破れないこともあります。ご本人が面倒と感じそうなことは、「これ、なかなか大変だよね」とねぎらいつつ、その場で一緒にしてあげるとスムーズです。

現実の受け入れ…その大仕事の評価

買取価格や売却方法を伝えてしばらくしてから、ご本人が捨てるのを決めることがあります。もちろん、実際に売る作業を進める途中で売る大変さを実感して、「やっぱり大変だし捨てることにする」「フリマアプリでの売却はやめる」こともあります。

このように、ご本人が当初の路線を変更された場合は、ぜひ

「本人は大仕事をしたのだ」

と思ってください。現実に合わせた判断をするのは、ご本人にとっては勇気が必要だったことでしょう。

ずっととっておいたものは実は売れないものだった。できると思ったけどそこまでするのは自分には無理だった…

これらを受け入れるのは大変なことです。そう思う気持ちが伝わると、その後も協力して進めやすくなります。

本日は、片付けるご本人が「売る」ことにこだわって片付けが進まないときにどうするか、そのポイントをお話しました。もちろん、今回お伝えしたことをするのは難しい場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。

当ブログでは、引き続き、実家の親や夫といった、ご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。

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この記事を書いたのは…

メンタルケア心理専門士、整理収納アドバイザー1級。教育機関、自治体勤務を経て、2021年にアトリエめいを開業。 カウンセリングを重視した片付けサポートに取り組む。整理収納コンペティション2022にて最優秀新人賞を受賞。奈良県大和郡山市在住。

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