奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付けようと思っている場所が、足の踏み場がない状況だ…けれども、片付ける本人が、ものを捨てるのに抵抗が大きかったり、複数名の手伝いを嫌がっていて、短期間で一気に進めるのは難しい…そんな場合は多いかと思います。本日は、足の踏み場がない部屋を、少しずつ片付けるときのポイントについてお話します。
片付けは「短期間で一気に」が難しいこともある
片付けは多人数ですると楽です。
要・不要の判断以外にも、
- 収納場所からの出し入れをする
- 袋等の入れものから出す
- 廃棄のものの分別をする、古紙をまとめる
- 他の部屋に移すものはそちらへ移す
- 売却等で送付するものは梱包する
…
等があります。
一つ一つは単純ですが、とにかく種類が多いです。そのため、手伝ってくれる人がいて、作業の分担ができるとはるかに進みますし、疲れやすさも違います。部屋に足の踏み場がなく、ものが詰め込まれた状態だと、何人かで一緒に作業を進めたいところです。
しかし、片付けるご本人からすると、多人数でするのは、精神的に負担が大きいものでもあります。
手伝いが多いと、皆に捨てるよう促され、不本意な結果になるという心配は大きいでしょう。
自分のことだから本来自分ですべきという気持ちも、取り払うのは難しいですし、手伝ってもらうのは恥ずかしい…ご本人はそう感じてしまいます。
さらに、長年片付けの機会が持てず、何が出てくるかわからない状態だと、そこに他人の目があるのはストレスになります。私的な手紙や写真など、他人の目に触れてほしくないものが出てきうるからです。それ以外にも、通帳などの貴重品や、健診結果、保険やローンの書類など、信頼している人以外、手に取ってほしくないものはたくさんあります。
これらの理由から、なるべく自分だけで進めたいとか、手伝ってもらうにしても一人だけ、短時間だけとご本人が希望し、片付けが少しずつ、長期に渡る場合があります。
少しずつ片付けるときのポイント
このような事情から、足の踏み場がない部屋を、ごく少人数で少しずつ片付けていくことになった場合のポイントを5つご紹介します。
- 「全部出し」はごく小さい範囲から
- 全てのものへアクセスできるのを目標に
- 残すものや保留のものは、「次は一目で何か分かる」ようにする
- 進んだら、「不要なものだけ」「同じ種類のものだけ」抜き取る方式もあり
- 収納家具内と床なら、床を優先する
以下、順に解説していきます。
「全部出し」はごく小さい範囲から
部屋のものを一挙に全部出しするのは、体力、時間に加えて大量のスペースを必要とするので、非現実的です。「全部出し」していく方式でも、部屋にある全てを一度に出すのではなく、床に積んであるひと山や、ダンボール1箱のような、小さな部分ずつ行うことになります。
入り口付近の床にあるものから仕分けていき、部屋の出入り、ドアの開け閉め時に雪崩にならない状態にします。部屋に面した廊下が使えるなら、ある程度の量ずつ、そこに出して仕分けていくと便利です。ダンボール等に入っている場合は、作業スペースのある部屋があれば、そちらに持って行って進めることもできます。
なお、仕分けて譲るか売ることにしたものは、作業を何日か中断する場合も、もとの部屋には戻さないのがおすすめです。その方が分かりやすいですし、家の外に出ていくのを促せます。
全てのものへアクセスできるのを目標に
このようにして、まずは通路を確保し、全てのものへアクセスできる状態を目指していきます。ものが床に積んであっても、「ドア、収納家具の開口部をふさいでおらず、一列だけの状態」になっていれば、全てのものにアクセスできることになります。
「前にあるものをどけないと、ものに手が届かず、片付けの続きができない」では、やはり片付け作業を中断後の再開が遅れがちになります。床置きで積んであっても、奥から手前まで何列もある…ではなく、一列だけなら、すぐに取り掛かれます。最初から床置きを完全になくすのはなかなか難しいかと思いますので、まずは床置きを一列までに留めるのを目標にします(とはいえ、そこまでものを減らすのも、本当に大変ですが…なお、手放しにくいもの各々の片付け方については、当ブログでもそれぞれ記事がございますので、よろしければご参照ください)。
残すものや保留のものは、「次は一目で何か分かる」ようにする
いったん要・不要の仕分けをして、残すとしたものや、保留ですぐに捨てられないものは、「後で見ても、一目で何か分かる」ようにしておきます。
以前に封筒などの入れものの片付けについて書いた記事でも触れましたが、封筒や外袋には中身を記載したり、簡易ラベルを貼ったりします。不透明なクリアファイルは無色透明のものに替えます。
中身が何か分かる部分は、極力、見える向きにして置きます。本なら、やむを得ず床置きでも、必ず背表紙が見える向きで置きます。なお、字の方向も全てそろうようにすると親切です。
また、収納家具内のものの仕分けに進んでからの話ですが、棚の中にものを戻す際、奥と手前で置かないと入らない場合は、奥に背の高いもの、手前に背の低いものを置くと、奥にあるものも分かりやすくなります。
ちょっとしたことですが、こうすると、再度手放すものを選ぶ必要が出た際もスムーズです。「棚に入りきらないから、手放すものを追加で選ぶ」となっても、見渡すだけで仕分け作業に入れます。
進んだら、「不要なものだけ」「同じ種類のものだけ」抜き取る方式もあり
最低限の通路が確保できた後は、「ある箇所のものを全部出し」方式に加えて、
「不要なものだけ抜き取る」
方式で進めることもできます。全部出しするまでもなく、外から一見して不要と判断できるものがあれば、それを抜いていくというやり方になります。
積んであるもの、収納家具の中にあるものの中に、傷んだ日用品や汚れた袋類など、ご本人がこれは廃棄と即決できるものが見えれば、それらを抜いて捨てていってもらいます。同様に、例えば本がたくさんある場合に、もう手放してもいいと思えるものだけ抜いてゆき、ダンボール2箱分以上になったら古本買取の集荷を依頼する、などの進め方もできます。
空間ができるのが速く、その都度達成感が出ますし、残りの作業もぐっとしやすくなります。「全部出し」すると圧倒されてしまう、疲れやすいという方にもおすすめです。
また、さらに作業が進んで、部屋にあるものにおおむねアクセスできるようになった後は、
「同じ種類のものだけ抜き取る」
方式もとれます。
これは、例えば、本、服、書類、写真、趣味のグッズ等が混在している場合に、本だけ抜き取って集め、本全体を見渡しながら、要・不要の判断をするというやり方です。数を見たり、同じものの間で比べながらの判断ができるので、そのカテゴリーのものを厳選する作業が進みやすくなります。
「抜き取るもの」についての注意
不要なものにしても、同じ種類のものにしても、「抜き取る対象」が不明瞭だと、抜き取る前にご本人は「これは、今回抜き取るものに入るのだろうか…?」と分類のことを考えてしまって、作業が進みにくくなることがあります。
例えば、本は本でも、ハードカバー、文庫本に加えて雑誌、冊子の報告書等もあります。どこまで指しているのか、ご本人が少し迷いそうだなという場合は、「雑誌は入れよう、(実物を見せながら)こういう報告書の冊子は入れないことにしよう」など、しっかり話してから作業をすると親切です。
また、「不要なもの」という表現も、該当するものの範囲は広いですし、判断基準も揺らぎやすいところがあります。「汚れたり傷んだりしていて、捨ててもいい紙袋、ビニール袋、ダンボール」など、範囲をよりはっきりさせてあげると、取り組みやすくなります。
収納家具内と床なら、床を優先する
部屋にある大部分のものにアクセスできるようになった後でも、床と、棚などの収納家具内の両方にものがあります。収納家具内のものも仕分けはできる状態ですが、まずは床置きのもののみ進めるのをおすすめします。
もちろん個人差はありますが、棚などの収納家具内に隙間ができると、片付けるご本人が、新しく入ったものを無意識にそこに詰め込んでしまう場合があります。また、床置きのものを詰めていってしまう場合もあります。
いずれも、どこまで仕分けたか分かりにくくなりますし、今収めても、そこが最終の収納場所ではないので、仕分けや移動の手間が余分にかかることになります。
収納家具内の片付けは、床置きしてあるものに比べると、作業の中断や再開がしやすいというメリットがあります。本棚やハンガークロゼットは、ものが一列で入っている分には、中身を出さなくても、不要なものを抜き取る方式で仕分けができます。引き出しも、その段だけ取り出してできます。そのため、時間が一度にとれないときでも気軽に進められます。
けれども、
まだ床置きで未仕分けのものがあり、ご本人も、つい隙間ができると詰め込みがちだ…
という状況なら、床のものから進める方が、時間や体力を節約できます。ぜひ、床の片付けを優先してください。
本日は、足の踏み場がない部屋を、少しずつ片付けるときのポイントについてお話しました。当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。