奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付ける本人は使っていないし、ものすごく思い入れが強いわけでもない…けれども、「手放して、後でもし必要になったら…」「後悔したら嫌だから…」と、消極的な理由でなかなか手放してくれない。そんなものが多い…片付けでは、こうした状況はよくあります。
本日は、こんなときにどうしていくかをお話したいと思います。
「起こっていないことへの不安や心配」は手強い
ものをなかなか手放せない理由の一つに、
「後でもし必要になったら、後悔したらと思って…」
というのがあります。実際には、手放して再び必要となる事態も、後悔もまだ起こっていないのですが、それらへの不安や心配から、身動きがとれなくなってしまっている…そんな状況です。
この、「まだ起こっていないことへの不安や心配」はなかなか手強く、何もせず待っているだけでご本人が自然と変わる、というのは難しいと思った方がよいかと思います。ご本人には大変ですが、片付けの中で意識的に練習をして、少しずつ克服してもらうことになります。
具体的には、ものを実際に手放してもらい、
- 手放す前は、後悔したらどうしようと不安でいっぱいだった
- でも、勇気を出していざ手放してみると、その後不安がいつまでも続くということはなかった。手放したことも、片付け作業の続きでそのことを聞かれるまで忘れていた
- 後悔する事態はまだ起こっていない。意外と大丈夫だった
という経験を重ねてもらいます。起こっていないことに対する不安を、「予想に反して大丈夫だった」という結果で和らげていくことになります。
ただし、この練習は、どうしてもしんどさが伴います。耐えてもらう場面もあるため、ご本人がある程度片付けに前向きになってからになります。ご本人の片付けへの意欲がまだ乏しく、片付け自体をやめると言いかねない段階では避けてください。
片付けで、ものを手放す練習をする際のポイント
それでは、実際に手放す練習をしていく際のポイントを3つ紹介します。
- まずは、失敗しても大丈夫そうなものから
- 後日、本当に後悔したかを聞き、結果を数字で返す
- 使わない確率は何%ぐらいだと思うか?と考えてもらうのも一つ
以下、順に解説していきます。
まずは、失敗しても大丈夫そうなものから
実際に手放す練習ですが、次のようなものからトライすることをおすすめします。
- 思い出や誰かとのつながりといった要素が少なく、重要度が低そう
- 8割以上ぐらいの確率で、ごみ捨て場から再回収せずに済みそう
- 万が一、また必要となっても、再入手が簡単
通常は、安価な日用品や、消耗品になるかと思います。
ただし、「後悔したら嫌だから」で手放せないものには、経験の証のようになっている思い出品が非常に多い場合があります。それらを減らしていく際は、以下の記事も参考にしてください。
なお、後で使いますので、この日に捨てることにしたものの総数をできる範囲で数えておいてください。「何個以上」という表現ができれば十分なので、正確に計らなくても大丈夫です。
後日、本当に後悔したかを聞き、結果を数字で返す
次に手伝いに行った際に、「この前は、不安が残るまま〇〇を手放してもらったけど、その後は大丈夫だった?後悔はあった?」とご本人に聞きます。以下、結果ごとの解説をします。
大丈夫だった場合
ほとんどの場合、ご本人の予想に反して大丈夫で、特に後悔はなかったことと思います。そこで、前回捨てたものの総数を引き合いに出し、例えば
「この前の片付けでは、全部で200個以上捨てていたけど、後悔したものが1つもなかったのはすごいね。間違いなく判断できてるんだね」
のように伝えます。こうすると、意外と後悔はないことに気づいてもらえると共に、自分の判断力に自信を持ってもらうことができ、今後も手放す勇気を出してもらいやすくなります。
後悔があった場合
まずは、ご本人をねぎらいます。「無理をさせてしまったね…ごめんね」というお詫びも必要です。また、捨てて後悔したものが他にもあったか聞きます。
この日は、リトライや、状況によってはその他の片付け作業も、進めることにこだわらないようにします。いったん引いて、手を付けるとしてもご本人が乗り気なところだけに留めます。
すこし日を空けて、再びトライする際は、前回のときよりも安全圏のもので行うとともに、
「この前、失敗したと思っているかもしれないけど、あの日は全部で200個以上も捨ててもらっていた。後悔したのはそのうち1個だけだったし、ほとんど全て、間違えずに判断できてると思う。これはすごいことだと思う」
と、数字も出しながら、ほとんどの判断は成功していたことを言葉で伝えます。「失敗確率は▲%以下」と表現してもいいでしょう。
ご本人は、ともすれば失敗の方にばかり目が行きがちです。でも、実際はうまくいっているところの方が圧倒的に多かったりします。それをぜひ伝えてあげてください。
使わない確率は何%ぐらいだと思うか?と考えてもらうのも一つ
どうしても「将来、使うかも…」の可能性を大きくとらえてしまい、手放せないという場合は、
「使わない確率が90%以上(使う確率が10%未満)と思うものは手放す」
など、感覚を数字でとらえて線引きするのも一つです。もちろん、ボーダーラインは、必ずしもこれと同じにする必要はありません。
例えば、降水確率との付き合い方を思い出してください。天気予報は外れることがありますが、降水確率10%のときに、傘なしで出かけても、「雨が降って濡れるかもしれないけど、その確率はせいぜい10%だから」と、割り切れる人がほとんどでしょう。
ものの場合も一緒で、天気予報がはずれるように、とっておけばよかったという場面は、ないとは言い切れません。でも、「捨てても、それで失敗する確率は、せいぜい10%」という枠に収まるものだけ手放すと決めると、心の準備ができます。そして、まだ起こっていない失敗を過大にとらえる感覚は弱まり、身動きがとりやすくなります。ぜひ、試してみてください。
本日は、「後でもし必要になったら、後悔したら」でものを手放せなくなっている際の進め方について、お話しました。
当ブログでは、引き続き、親や夫といったご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。