「経験の証」になっている、思い出のものの片付け

奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。

「思い出のもの」は、手放すのが難しいものの代表です。本日は、その中でも特に「経験の証」という位置づけになっているものの片付けについて、お話しようと思います。

目次

思い出のものとの心のやりとり

学生時代のユニフォーム、コンサートのパンフレット、手帳やノート、マタニティグッズ、ベビー服…

これらは、永久保存のものもあれば、ある程度時間が経つと手放す気になれるものもあるでしょう。

思い出のものがもたらしてくれる何か…それを心が充分に受け取り、自分の一部にするという作業が完了している場合は、「もういいや」と感じることでしょう。あるいは、受け取る必要がなくなった場合、例えば、以前は心の支えにしていたけれど、自分自身が変化して、そのものによる支えが不要になった時などもそうでしょう。

こうした場合、そのものは形のある思い出品としての役割は、既に果たし終えたものと思われます。逆に、現在進行形でまだ何かを受け取り続けている場合は、当然ながら手放すのはしんどいはずです。無理せず手元に置いておく方がいい、といえるでしょう。

「証明書」になっている思い出品

一方で、思い出のものの中には、持ち主との心のやりとりが乏しいと見られるものも時折紛れています。

「記念品だから一応」とっておかれているだけで、心にくるものがない品々です。これらは、手放すことを考える余地があります。心になにかを与え続けているものなのか、そんなことはない、形だけの証明書に近いものなのか…両者は大きく違って見えます。

しかし、実際には、たとえ心にくるものがなく、「経験したことを客観的に示す証明書」であるだけの状態だとしても、手放すことは難しかったりします。ものを、何かを経験した証、もっと言えば人生の証と考える方にとっては、手放すことで経験を失うように感じるからです。(実際は、経験が奪われることはありえないのですが…)

「人生を証するもの」が手放せず、生活空間が圧迫されていると、「ものを手放しても、あなたの経験は失われないし、あなたの価値も脅かされない」と、ものに頼る必要性のなさを訴えたくなります。しかし、長年慣れ親しんでいる考え方をすぐに変えるのは困難です。まして、生きてきた証など、自分の存在の根本に関わる(とご本人が感じている)場合はなおさらです。

ですので、私は

「証を残すことは否定しない。でも、一つの出来事を証するものの数を減らしていく」

路線で進めています。証明書は残すけど、10枚も20枚も要らない…そう思ってもらえるのを目指しています。そのためには、遠回りに思われますが、ものにまつわる思い出話を聴くのが効果的です。

思い出話を聴く効果

ある思い出のものが一つ出てきて、ご本人がそれについて自発的に語り始めたら、いったん作業を止めてじっくり聴きます。

「この時はこれこれで…それで一緒だった◯◯さんは、大学のセミナーで知り合った友達で…」

聴き手としては、一つのものからだけでも、驚くほどたくさんのエピソードが引き出されるなと感じるでしょう。

そうした感想を後で話すと、役立つことがあります。

例えば、ある旅行の思い出品がたくさんある。チケット、ツアーや行き先のパンフレット、日程表、写真、スーツケースに付けていたタグ、お土産、レストランのレシート…「全部残してきた」これらのものについて、

「さっきは、たった一つのものからだけでも、あれだけ多くのことを思い出していた。だから、これも…全部をとっておかなくても、ちゃんと思い出せるんじゃないかなと思う」

と伝えると、ものを厳選していく心の準備をしてもらえます。

また、ものにまつわるご本人の気持ち…例えば、過去に感じた感動などは、

誰かにその話を聴いてもらい、わかってもらったら、なんだか手放す気になれた

ということもあります。作業を中断して聴くのは、片付けが進まないように見えますが、実は大きく前進することもあるのです。

効果は少し時間を置いて出ることがありますので、今すぐ手放してもらうことにこだわる必要はありません。いったん保留にしつつ、他の思い出品も進めていくうちに、以前なら手放せなかったであろうものも、手放すと判断されたりします。

重要度の判断に活かして

また、思い出話を聴く中で、重要度が低そうなものも、目星がついてきます。

レストランや観光地の話は出てきたけど、空港の話は出てこなかった。空港関係のレシートは手放せるかもしれない…

などです。そして、

「話を聴いてると、こっちのものは、優先度は低そうに見えるんだけど…どうかな?」

と確認していきます。

なお、思い出を聴く前から、まず重要度が低そうに思われるもの…例えば旅行にあたっての注意案内書類や、予約金のレシート等もあります。そういったものを手放すのを勧める場合でも、まず思い出を聴き、ご本人にとって大切なものを思い起こしてもらった後から切り出す方が、スムーズに進むように思います。

本日は、思い出のもの、特に経験の証となっているものの片付けについてお話しました。当ブログでは、引き続き片付け応援のための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。

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この記事を書いたのは…

メンタルケア心理専門士、整理収納アドバイザー1級。教育機関、自治体勤務を経て、2021年にアトリエめいを開業。 カウンセリングを重視した片付けサポートに取り組む。整理収納コンペティション2022にて最優秀新人賞を受賞。奈良県大和郡山市在住。

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