奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。
片付けでは、日記、メモ、ノートといった、日々の「記録」ともいうべきものによく出会います。本日は、片付けるご本人が、これら記録を捨てられないときに、片付けを進めるためのポイントをお話したいと思います。
「記録」を片付けていく際のポイント
片付けの中でも、なかなか手放す踏ん切りがつきにくいのが、日記や日々のメモ、ノートです。自分の思いを綴ったり、学んだことをノートに書くというのを日々行ってきた場合、気が付けばかなりの量になっていることがあります。
片付けるご本人が、これらをなかなか捨てられない…そんなときに、片付けを進めるためのポイントを2つ、紹介します。
- ものの役割をはっきりさせていく
- 同じことに関連したものは、少しずつ数を減らしていく
以下、詳しく解説していきます。
ものの役割をはっきりさせていく
まずは、それを見返して使うことがあるか、また使うならどのように使うかを聴いていきます。
日常生活や仕事のメモ、学んだ内容を書いたノートなど、実用的なものなら、
「役割は終えているか」「また参照することはあるか」「なくしたら困るか」
を一緒に確認します。
勉強内容を書いたノートを、復習用にとっておこうとしても、内容が古くなっていることも多いです。仕事のメモも、重要事項の記録は、たいがい職場の方でも残っています。こうしたこともご本人と確かめながら、手放せるものは手放していきます。
もちろん、実用面以外でも、役目を担っている場合はあります。
実務上はもう使わないとか、内容が古くてもとっておきたいなら、思い出品、精神的な支えなどの役割を果たしていると思われます。これらのものについても、ご本人の話を聴きながら、ご本人にとって残す意味があるのを確かめます。
ただ、残してもプラスにならなさそうなものなのに、「経験したことは憶えておかなければ」とご本人が残したがったり、ものの役割がはっきりわからない場合もあります。こうした際は、次のようにしていきます。
経験したことは憶えておいておかなければ、と思っているときは
ご本人が、経験したことを思い出せるようにしておかなければいけない、と感じている場合があります。
うれしかったことだけでなく、嫌だったことや、さして重要でないことも憶えておかなければと、義務のように考えている…
こうしたケースでは、その場で説得してすぐに行動を変えてもらうのは、難しいことが多いと感じます。
それでも、次のことをすると、今すぐとはいかなくても、前に進めることがあります。
- 全てのことを憶えておかなくてもよい、と手放す選択肢も伝える
- そのものが、ご本人に与えてくれるものを聴いてみる
例えば、苦しい思い出がよみがえるノートを、ご本人が残しておこうとしたとします。ご本人にもう少し詳しく聴けそうな雰囲気であれば、
「思い出して苦しいだけなら、手放すのもありだと思うけど…」
と前置きをした上で、
「何かこう…今でもこれを見ると頑張ろうという気持ちになるとか、そういうのがあるのかな…?」
「それ(ノートが思い起させること)を経験したことが支えになっているとか、そんな感じなのかな…?」
など、ご本人の様子を見ながら、これかなと思う気持ちを言葉にして、確認していきます。
その中で、支えとか、これからのご本人にプラスになるものがあることがわかれば、もちろん残していいものです。ただ、そういったものがなく、単純に「嫌なことも憶えておかなくては」という義務感だけからであれば、再度、
「嫌なことを思い出させるだけのものだったら、手元に置き続けてもつらいだけだし…嫌なことまで全部憶えておかなくてもいいんじゃないかな…手放すのもありだよ」
と伝えます。
「実は私も、嫌な思い出しかないものは捨ててるし…そうするのは、別にずるいことじゃないよ」
のように、
- 手伝う側の自分もそうしている
- 引け目を感じなくてもいい
と伝えるとより効果的です。
また、片付けを進めることも考えながらだと難しいのですが、「ものを減らしてほしい」という気持ちからでなく、
「これから幸せに過ごしてもらいたいから」
という気持ちから言うのがポイントです。
このタイミングでは、あくまで提案に留めて、決断は迫らないのがおすすめです。今まで自分を縛っていた「こうするべき」から自由になるには、少し時間が必要なことがあります。しばらくしたあるときに、受け入れてもらえたりします。
役割がまだはっきりしないときは
そのものの役割がはっきりしないときは、ひとまず捨てるのは待ってください。
例えば、日々の出来事を綴ったメモ帳を、
「残しても仕方ないし…ひと思いに処分しようか…」
と片付けるご本人が言ったとします。
充分に言葉になっていなくても、前項のような義務感から以外に、何か引っかかるものがありそうだ…そんな様子なら、捨てずにいったん留まってください。
何日か経ってから、ご本人が
「実は、昔の経験をもとにした小説を書きたい、という思いが出てきて…このメモ帳は、その際の資料にしたい」
と話してくれるなど、そのものの役割がはっきりすることがあります。
このように、何らかの役割があっても、背後にある願望も含めて、本人の中でそれがまだはっきりしていない段階というのはあります。
手伝う側はつい、そこで待たずに目の前のものを減らすことを優先しがちです。でも、ここで頑張って踏みとどまり、ご本人にものの役割をはっきりさせる経験をしてもらうと、その後の片付けでめりはりが出ます。さして重要でないものを、手放してくれやすくなります。
同じことに関連したものは、少しずつ数を減らしていく
1つの事柄に関連したものが複数ありそうだという場合は、以前以下の記事でも触れましたが、
1つのものからだけでも、意外とたくさんのことを思い出せる
ことに気づいてもらうのも有効です。
その上で、例えば1つの同じ出来事に関連したものが5つあれば、
これが5つじゃなくて1つしか残っていなくても、その出来事は思い出せるんじゃないかな…
と伝えてみます。例えば、学生時代にものすごく勉強を頑張った思い出は、全てのノートをとっておかなくても、1冊でも充分、思い出せるものです。
さすがにいきなり1つまで減らすのは、しんどいので、一気に手放すのは狙わず、まずは1つを手放すところからのスタートで大丈夫です。
意識的に少しだけ減らし、ご本人が大丈夫と感じれば、必要に応じてもう1つ減らし…とスモールステップで進みます。
最初は理想のラインまで減らせなくても、片付けに慣れ、「ものを減らしても大丈夫」という実感が定着してきた終盤に、もう一度見直すと、「もっと減らしてもいいや」となることは、よくあります。
なお、特にメモに多いのですが、何についてのものか思い出せず、近くにあったものとも関連がなさそうなものも、よく出てきます。最初はご本人も残すのを望むことが多いのですが、お金などの重要事項に関連しないのが明らかであれば、「手放す方向でいこう」と伝えます。
もし引っかかるなら、そうしたものだけ集めておきます。そして、整理が進み「やっぱり、何のものかわからないし…なくてもいいか」と、ご本人が納得したタイミングで手放すのも手です。
本日は、日記、メモ、ノートといった記録が捨てられないときに、片付けを進めるためのポイントについて、お話しました。
当ブログでは、引き続き、実家の親や夫といった、ご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。