「ものを入れないのはもったいない」状態から、空き空間の価値をわかってもらうために

奈良のメンタルケア心理専門士・整理収納アドバイザーの本田一紗です。

片付けの初期によくあるのですが、片付けるご本人が、「空いているスペースに、ものを入れないのはもったいない」と、収納家具いっぱいにものを入れるのを標準と感じていることがあります。本日は、この状態から、空き空間の価値をわかってもらうためにできることについて、お話したいと思います。

目次

片付けでは大切にする「空き空間」

ものは収納場所に収まる上限まで詰めるのではなく、2割程度の空きをつくり、空間の余裕をもたせるのが理想的です。

ものがぎっしりで、空間の余裕が全くない状態だと、出し入れがしにくくなります。そのため、ものを出しても元に戻せず、散らかりやすくなります。そもそも、はじめに詰まった中からものを引っぱり出すのも面倒になり、使わずじまいに…ということもあります。また、奥のものが見えなくなる詰め方までしてしまうと、見えない分は存在を忘れられてしまいます。

空き空間は地味ですが、部屋を維持しものを使うために、なくてはならないものです。そのため、片付けでは、収納家具に収まるギリギリの量よりももっと少なくなるまで、ものを減らしていくのです。

ですが、片付けるご本人が、こうした空き空間の捻出のためにものを減らすのを渋ることはよくあります。奥行きの浅い収納家具でも、奥と手前で2列置きして最大量まで詰めたい、出す時に引っかかっても、奥に何があるか見えなくても気にしない…という場合もあります。

ものを便利に「使う」よりは、ものがそこに「存在している」ことが優先されてしまっている…

そんな状況といえます。

確かに、ものの中には、一部の思い出品など、手に取る機会は少なくても、そこに「存在している」ことでお守りのように働く性格のものもあります。

でも、使うことが基本の日用品全般までもが、「使う」ことよりも「存在している」ことが目的になってくると、それこそ部屋からあふれるレベルまでものが増えてしまいますし、「生活すること」からかけ離れていきます。部屋に生活空間としての機能をもたせるためにも、片付けるご本人に「空き空間」の価値をわかってもらうのは大切です。

空き空間の価値を分かってもらうためにできること

とはいえ、特に、片付けるご本人が現在、ものを使うことよりも持つことによって満足感を得ている場合には、空き空間の価値を分かってもらうのは大変ですし、長期戦になります。ですが、できることはあります。それを3つ、これから紹介します。

  • 使ってないものを使ってもらい、ものは「使う」のを「標準の状態」にしていく
  • 「空間があると便利で楽」を実感してもらう
  • 「空間がないと、ものを有効活用できない」現状も知ってもらう

以下、詳しく解説していきます。

使ってないものを使ってもらい、ものは「使うのが標準」にしていく

回り道のようではありますが、ご本人の中で、もののメインの役割が「存在すること」から「使うこと」へ変化するよう、働きかけていきます。

空き空間の価値が伝わっていない段階でも、

「床にこれだけ積まれているのは何とかしよう」「棚には何とか収まるようにしよう」

で片付けに取り組むことはできます。いったんはその片付けを進め、ものの役割を「存在する」から「使う」にシフトさせるきっかけとしていきます。

片付けでは、「使っていないけど、このまま捨てるのは嫌だ」というものが出てきます。粗品でもらったタオル、セールで買った消耗品…それらを、実際に使い始めてもらうようにします。

こうすると、ものを持つために持つのではなく、使うことを基準にするのを促せます。ものの持ち方、ものとの付き合い方を再考してもらいやすくなります。

また、以前に以下の記事でも触れましたが、今まで使っていなかったものを、このように意識して使い始めると、使い切るには意外と時間がかかることにも気づきます。ですので、ストックを多く持とうとして、ものがいっぱいになっている場合にも効果があります。

「空間があると便利で楽」を実感してもらう

前項の「使うのを標準の状態にする」に取り組むのと並行して、

「空間ができると、楽になる、ものを使いやすくなる」

のを実感してもらいます。前項の取り組みで使い始め、ものを使い切ってできたスペースを、何も入れずに数週間キープしてもらいます。

その際は、ご本人に

「この空いたところは、しばらくは新しいものは入れずに空けておいてもらっていいかな?」

と言うなどして、きちんとお願いしてください。私はサポートの一環でお客様の次回までのホームワークを作成しますが、その中で「溜めてしまった消耗品を使い切ってできたスペースに、次回までものを入れずにキープする」を課題の一つにすることもあるぐらいです。

前項での片付け場所に消耗品が少ない場合には、例えば洗面所や台所など、消耗品が多くある場所で、余剰や使いかけのものを積極的に消費していきます。試供品やホテルのアメニティ等でもらったもの、いつもと違うのを買って食べかけ・使いかけのままになっていた食品や歯磨き粉などを使い切って(もちろん古いものは処分して)もらいます。

こうしてできたスペースを、新たなもので埋めることを避けてもらいつつ、ある程度の期間過ごしてもらいます。こうして、

「空間ができると、楽になる、ものを使いやすくなる」

ことに加え、

「気分もなんだかすっきりする」

も実感してもらいます。

片付け前の段階では、ものの出し入れに手間がかかっていても、ものが多く雑然としている光景に本当は神経がすり減っていても、それが標準になっています。そのため、指摘してもなかなかわかってもらえません。今より楽になってようやく、これまでの不便に気づいてもらえます。一度実感してもらえると、後はとてもスムーズです。

なお、消耗品の多いスペースより、思い出品などが多いスペースの方が気になる場合もあるかと思います。ですが、思い入れのあるものは、もともと「存在していること」がメインの役割という面が強いです。最初は避けるのが無難です。消耗品の片付けで、空間を残すメリットをご本人が実感し始めてから、取り組むのがおすすめです。

「空間がないと、ものを有効活用できない」現状も知ってもらう

以下の前回記事では、趣味で集めたものの片付けの下準備として、数を増やし過ぎて埋もれ、メンテナンスもされなくなっていたものを見る、ということに触れました。

空間が欲しい今回も同様に、詰め込み過ぎで埋もれて、日の目を見なくなっていたものは見てもらうようにします。存在を忘れて二度買いしてしまったものや、使われないまま経年劣化してしまったものの存在は、「ものを増やし過ぎると不便が出たり、結果として大切にできなくなる」という意見に説得力を与えてくれます。

なお、ものの増やし過ぎでこうした支障が出ている事実は知ってもらう必要がありますが、ご本人を責めるような言い方は控えます。「ものを持ちすぎているから、こうなった」など、ネガティブな現状に重きを置くよりは、

「ものを減らしたら、それぞれのものをもっと活かせるようになると思う」

のように、こうすればもっとよくなる、をメインにする方が、ご本人の気持ちの負担は少なくなります。

思い出品類の場合は、「使う」=「見たいときに手に取れる、見返せる」ことになります。せっかくの大切なもの、好きなものは、普段からもっと手に取ってもらいたいという気持ちを伝えてみてください。

本日は、空間の価値をわかってもらうためにできることについて、お話しました。

なお、自分達だけでは進めるのが難しい場合もあるかと思います。その際は、第三者の手を借りることも検討してみてください(私が代表を務めるアトリエめいでも、片付けのサポートをしております)。

当ブログでは、引き続き、実家の親や夫といった、ご家族の片付けを手伝うための記事を記していきます。ご興味のある方はチェックしてみてください。

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この記事を書いたのは…

メンタルケア心理専門士、整理収納アドバイザー1級。教育機関、自治体勤務を経て、2021年にアトリエめいを開業。 カウンセリングを重視した片付けサポートに取り組む。整理収納コンペティション2022にて最優秀新人賞を受賞。奈良県大和郡山市在住。

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